久保利明のさばきの極意

NHK将棋講座のテキストと同じ内容です
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評価:A
対象者:5級〜三段
発売日:2005年9月

その軽い捌きで「アーティスト」とも評される久保八段が講師を務めた「NHK将棋講座(2004年10月〜2005年3月)」のテキストを加筆・修正して出版されたのが本書です。

全222ページで見開きに局面図が4枚の四章構成となっており、取り上げられているテーマは以下の通りです。

第一章 さばく四間飛車(対棒銀、5筋位取り、居飛車穴熊、トーチカ)
第二章 さばく三間飛車(対急戦、右四間飛車早仕掛け、右四間穴熊)
第三章 さばく中飛車(角交換型中飛車、5筋位取り中飛車)
第四章 さばく相振り飛車(相振り飛車3七銀戦法)

図は△4二金まで。ここで歩頭に飛び出す▲5六銀が好手。以下、△同歩▲1一角成△2二銀▲1二馬△5七歩成▲同金△5五角▲8五香で先手よし。

各章の最初に振り飛車の頻出テーマ図が掲載されており(下段にそこまでの手順を簡単に記載)、まずは序中盤の戦略の立て方を定跡に沿って進めていきます。
分岐点となる局面ではどちらかに片寄らずに考えられる2〜3通りの手を一つ一つ解説していきます。

また、ポイントとなる局面では「ここに注意しよう!」というキャプションとともに、我々アマチュアが指してしまいやすい悪手や居飛車側の好手を盤面図を添えて、ケアされています。

普通はこのページ数にこれだけの戦形を詰め込むと掲載されている変化が乏しかったりするのですが、本書ではそのようなことはありません。その分、図から図の間に10手位の手順が掲載されているので、頭の中で手順を進められる棋力が求められます。

この本が秀逸なのは、「優勢」や「捌けて十分」な局面からさらに局面を進めて、寄せの局面までの具体的な手順を解説している点で、定跡から終盤での寄せ方までが一つの線として勉強できるようになっています。

さらに各章の最後には、その戦形を実際に指した久保八段の25局(!)もの実戦譜が、4つの盤面図とミニ解説を添えて掲載されており、久保八段の捌きを将棋盤で堪能できます。

唯一残念なのは文中の「第9図では〜」「第14図では〜」と盤面図を解説するときに、その文章の横にあるのは「第10図」や「第15図」だったりして、前のページに戻らなければならないことが多いので、慣れるまで少しストレスがたまる点です。

ここ数年の「NHK将棋講座」はなかなか充実した作りになっているので、保存用としてお手元に置いておくとよいでしょう。「お前の振り飛車は重いんだよ!」とか言われている振り飛車党(=僕のこと呼んだ?)は声に出して最低3回朗読しましょう。

同講座のテキストを単行本化した「鈴木大介の振り飛車自由自在」も振り飛車の戦い方をテーマにしています。構成にやや難がありますが振り飛車党の方はこちらも参考にしてみてください。また、居飛車党の方には、居飛車視点で対振り飛車の攻防を解説した「渡辺明の居飛車対振り飛車」がオススメです。