振り飛車党宣言 Vol.3 新感覚の居飛穴対策

四間飛車党の試行錯誤の歴史の1ページ
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評価:B
対象者:5級〜三段
発売日:2003年9月

Vol.2 新感覚の三間飛車」に続く本書のテーマは振り飛車党を激減させる最大の要因となった居飛車穴熊への対策です。

本書は1994年に出版された同タイトルの復刊本ですので、「藤井システム」は登場していません。したがって、小倉、杉本、藤井の三氏がそれぞれの新研究で居飛車穴熊に挑む形が紹介されています。

全226ページの4章構成、前半が講座編、後半が自戦記スタイルの実戦編となっています。

第1章 定跡研究編
小倉の居飛穴退治
杉本の急戦居飛穴破り
藤井流最新居飛穴対策
藤井猛のワンポイント講座
第2章 実戦編(自戦記)
荒らさばきを封じる / 逆転の一局(小倉)
作戦成功の一局 / リーグ入りの一番(杉本)
先手の工夫に苦戦 / 振り飛車、理想的な展開(藤井)
第3章 次の一手編
第4章 対居飛穴好局集

左の桂馬も攻めに参加して全軍躍動の構え

第1章 杉本の急戦居飛穴破りより :図は▲9七角まで
杉本七段の兄弟子である小林健二九段が指し始めたことで有名な形です。以下△4二銀引▲7七桂△2二銀▲1六歩△3二金▲1五歩△8五歩▲4五歩△同歩▲同銀△4四歩▲3六銀と先手陣は全軍躍動となります。△4二銀引で△3二金とすると、▲4五歩△同歩▲同銀△4四歩に▲3四銀として△同金は▲5三角成となり先手優勢です。この端角がポイントで、△9四歩〜9五歩と角頭を攻められても、▲同歩△同香▲5三角成△同金▲9五香の2枚換えでやはり先手優勢です。

スーパー四間飛車」や、続編「スーパー四間飛車 最新版1 急戦!居飛穴破り」レビューページでも同じ局面図を紹介していますが、当時の「将棋世界」を読むと二人の共同研究による部分も大きかったようで、感覚が重視されていた四間飛車に現代矢倉のようなシステムを最初に導入したのはこの二人の功績でしょう。

イビアナが完成する(△2二銀とハッチを閉じる)前に積極的に動いていくというコンセプトはまだ登場していなかったので、本書で披露されているどの戦型も穴熊側に囲いの完成を許してしまいます。

しかし、上図の「スーパー四間飛車」や小倉六段の「立石流への組み換え」など、多くの戦型では四間飛車側が主導権を握れますので、現在でも十分に通用すると思います。