振り飛車党宣言 Vol.2 新感覚の三間飛車

石川、中田(功)、安西の三氏が捌きのコツを披露
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評価:B
対象者:5級〜三段
発売日:2003年8月

新進気鋭(当時)の振り飛車党を執筆陣に迎えた「振り飛車党宣言」シリーズ。「Vol.1 新感覚の四間飛車」に続く本書のテーマは軽い捌きが求められる三間飛車です。

前巻は数多くある四間飛車本において「One of them」として埋もれてしまいそうでしたが、三間をテーマにした棋書は現在でも少ないので参考になるページはこちらの方が多いです。その分、評価をBに上げてみました。

全226ページの4章構成、前半が講座編、後半が自戦記スタイルの実戦編となっています。

第1章 定跡研究編
▲三間飛車vs△急戦
△7三桂戦法 / △左6四銀 / △7五歩早仕掛けほか(石川)
▲三間飛車vs△左美濃
対左美濃コーヤン流(中田)
△三間飛車vs▲居飛穴
△2二飛・3二金の向かい飛車へ / 石田流へ(安西)
第2章 実戦編
自戦記(計6局)
第3章 次の一手編
第4章 三間飛車好局集

左美濃の急所を突くこの一手で勝勢になります

第1章 定跡研究編より 中田功六段の講座:図は▲3五歩まで
コーヤン流三間飛車の極意 持久戦編」などでも紹介されている有名な局面です。以下△同歩▲3四歩△同玉▲3五銀△同玉と玉を上部に引っ張り出してから▲2三角のタダ捨てが退路封鎖の決め手で、以下△同銀▲4六金△2五玉▲3三角成で必至となります。

出来れば中田六段には対居飛車穴熊の講座も書いてほしかったのですが、ページの関係上(?)、掲載されていません。

居飛車穴熊対策は講座編の最後で安西六段が担当しています。テーマとなるのは、▲9八香と居飛車穴熊の意思表示を確認してから、△2二飛と向かい飛車に振りなおし&△6四角と好位置にに転換して、攻撃陣を牽制する指し方と石田流への組み換えです。

前者は手順と狙いが少々異なりますが、「三間飛車道場 第2巻 居飛穴 vs 4三銀」のレビューページで掲載している2枚目の局面図と似ていますので、興味のある方はご確認ください。

安西六段は現在はフリークラスですので、ご存じない方も多いと思いますが、王位リーグにも入ったこともあり、また「誰がどう考えても△7二銀と美濃囲いを完成させる一手」という序盤で2時間近く考えるなど(笑)、加藤九段、郷田九段に並ぶ超長考派として知られていました。

既に三間飛車をある程度指している方が読んでみたら、戦型の幅を広げる上で役に立つかもしれません。

シリーズ次巻となる「振り飛車党宣言 Vol.3 新感覚の居飛穴対策」では再びテーマが四間飛車に戻り、小倉、杉本、藤井の三氏が対居飛車穴熊の研究を披露しています。