小林健二:スーパー四間飛車

小林九段の絶頂期を支えた新戦法
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評価:A
対象者:8級〜三段
発売日:1993年8月

相居飛車全盛の90年代前半、居飛車穴熊の猛威を受けて減少の一途をたどっていた四間飛車党に転向し、A級復帰を果たした(10勝1敗で昇級)小林健二九段の代表著書「スーパー四間飛車」シリーズの第一冊目です。

本書では当時、四間飛車の天敵であった居飛車穴熊・左美濃の持久戦二大戦法に焦点を絞り、四間飛車側から緩急自在に動いていく戦い方を紹介してあります。

310ページ、見開きに局面図が4枚(上段2枚・下段に2枚)、解説はページの中央段に限定と独特の作りになっています。全四部構成です。

第一部 居飛車穴熊編
@▲5六銀型基本形 A先手地下鉄飛車(銀冠から▲1九飛車)
B端角戦法(▲9七角−▲4八飛車−▲7七桂型穴熊破り)
C早桂作戦 ▲3九玉−3七桂型急戦 ▲4八玉−1七桂馬型急戦
D浮き飛車型 角交換型 角交換拒否型
E居飛車穴熊のルーツ 升田vs大山の名人戦にみる居飛車穴熊

第二部 左美濃編
@▲4五歩型基本形 A▲5六歩型
B対左美濃急戦 先手四間飛車vs△6四銀急戦(つづいて後手四間飛車型)

第三部 終盤編
プロの実戦譜を基に、四間飛車の終盤の戦い方のコツを解説。
第四部 実戦編 小林九段の実戦譜から4局を選んで自戦記風に解説
巻末に全チャート図が折込。

端角戦法

対居飛車穴熊の藤井システムが表舞台に登場するまでには、まだ数年の年月を要すことになるのですが、小林九段のスーパー四間飛車あたりから、なんとなく形が見え始めてきています。

共通しているのは@居飛車穴熊が理想形(金銀3枚を3×3に固める)に組み上げるのを許さない、または居飛車穴熊に組むこと自体を阻止する A振り飛車側から積極的に動いていきポイントをあげる B自陣の形にこだわらない柔軟な発想 といったところでしょうか。

現在では、対居飛車穴熊における▲5六銀型は手詰まりになりやすい、との理由で敬遠されるきらいがありますが、端角戦法(四間飛車穴熊にも応用できる)・早桂戦法・浮き飛車戦法は今でも十分に通用する優秀な戦法だと思います。

欠点は@各章の最初にある基本図に至るまでの手順が全く書いていない A実戦編(第四部)においてもやはり途中から始まり、初手から棋譜が無い。(たった二ページあれば済むんですが・・・)B発刊され10年以上経つ今読んでみると、対左美濃は「藤井システム」の方が参考になるC「スーパー四間飛車」シリーズで秀逸なのは本書のみで、続くシリーズはイマイチ。といった点です。

対居飛車穴熊におけるシステム化のはしりに興味がある方、藤井システム・鈴木システムでもない他の戦法を勉強してみたい方にオススメしたい一冊です。

本書から3年後に出版された続編「スーパー四間飛車 最新版1 急戦!居飛穴破り」でも上図の端角戦法をはじめ、浮き飛車戦法、藤井システムなどの居飛車穴熊対策が解説されています。