中飛車道場 第1巻 ゴキゲン中飛車超急戦

知っていないと踏み込めない手順が満載
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評価:B
対象者:5級〜六段
発売日:2004年1月

三間飛車道場」の完結(全3巻)を受けてスタートした「中飛車道場」シリーズの第一弾のテーマは、アマ・プロ問わずに人気の戦法「ゴキゲン中飛車」の超急戦です。

初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△5四歩▲2五歩△5二飛▲5八金右△5五歩▲2四歩△同歩▲同飛に△5六歩と突いて大決戦となるこの急戦は、いまだに結論が出ておらず、最近では2008年3月に行われた第33期・棋王戦の第3局(▲羽生王座△佐藤棋王)でも新手が登場しています…っていつ書いてんだこのレビュー!?

全219ページの5章構成で、見開きに盤面図が6枚配置されています。

第1章 基本図までの駒組み
第2章 ▲5八金右型(大決戦型)
第3章 ▲5八金右に△5四飛型
第4章 ▲5八金右に△6二玉早上がり型
第5章 ▲2四歩早突き型

最も激しいとされている手順です

第2章 ▲5八金右型(大決戦型)より:図は▲1一龍まで
プロの公式戦で最も多く指されている(2008年3月現在で50局)超急戦の基本図です。以下、△9九馬▲6六香△5四銀▲2二歩(2三角)などが代表的な変化です。

仕掛けると即終盤を迎えるこの形は「横歩取り△4五角戦法」のようなもので「知っていないと指せない」将棋の典型例だと思います。

最近では、この超急戦はアマだけでなくプロでも影を潜めてきました。その理由としては、1.後手は▲5八金右に△5五歩と突かず△6二玉と囲ったり、▲2四歩△同歩▲同飛に△5六歩を自重して△32金と上がり局面を収めることが出来る。2.先手には▲2二角成△同銀と角交換をするいわゆる「丸山ワクチン」や▲2五歩保留型の急戦など、ほかにも選択肢がある…など、先手と後手の思惑が一致しない限りこの局面にはならないからです。

対ゴキゲン中飛車における居飛車の作戦の変遷は勝又六段の「最新戦法の話」が詳しい(P119〜)ので、お持ちの方は参考にしてみてください。

ゴキゲン中飛車側にも選択肢があるので、この形を指さない人には全く必要のない一冊です。また、超急戦を歓迎する方にも、出版から4年以上経っている本書は少し古いかもしれません。プロ棋士の公式戦で現れた最新の変化は深浦王位の名著「最前線物語2」のP65〜72で詳しく解説されていますので、気になる方はそちらも参考にしてみてください。

次巻の「中飛車道場 第2巻 ゴキゲン中飛車本格急戦」では、▲3六歩〜3七銀〜4六銀(あるいは▲4六歩〜4七銀)とするスタンダードな居飛車急戦策が解説されています。