振り飛車党宣言 Vol.1 新感覚の四間飛車

小倉、杉本、藤井の三氏が独自の研究を披露
この本の詳細をAmazonで見る

評価:C
対象者:5級〜三段
発売日:2003年7月

左美濃や居飛車穴熊が猛威を振るい、振り飛車党が激減した90年代前半にプロ棋士デビューした小倉、杉本、藤井の「振り飛車三銃士」が新研究を披露して居飛車急戦を迎え撃つ四間飛車ガイドです。

なお、本書は1993年に発行された同タイトルの復刊(文庫サイズ)で、シリーズは4巻まであります。

全226ページの4章構成、前半が3人による講座編、後半が自戦記スタイルの実戦編となっています。盤面図は見開きに4枚配置されています。

第1章 定跡研究編
小倉流急戦封じ(1)△4五歩 / 小倉流急戦封じ(2)△1三香(小倉久史)
▲4六銀左の対策 / △6四銀の対策(杉本昌隆)
先手棒銀の対策 / 後手棒銀の対策(藤井猛)
第2章 実戦編
作戦成功の一局 / 竜王との同期対決(小倉久史)
新手△3八歩 / 7八金型四間飛車(杉本昌隆)
▲9七角の戦い / 内藤先生との一局(藤井猛)
第3章 次の一手編
第4章 四間飛車好局集

4六銀戦法に対する新手

第1章 定跡研究編より 杉本七段の講座:図は▲3七銀上まで
局面図までは四間飛車に対する先手4六銀戦法の定跡手順です。ここで△3八歩と垂らすのが杉本七段の新研究です。以下▲同飛△4五歩▲3三角成△同飛▲5七銀となります。この△3八歩は、この手順のように△4五歩を成立させるための揺さぶりです。この歩を取らずに▲3六銀なら△3九歩成▲3七桂△6四歩となり後手十分で、以下▲6六角△6五歩▲3九角なら△4五歩が両取りです。また▲5七銀に代えて▲4五同銀なら△2七角が飛車銀両取りとなります。

杉本七段は当時、雑誌「将棋世界」で「素敵!四間飛車」という長期連載の講座を担当していて、プロも参考にしていたといわれるくらい緻密な手順を惜しげもなく披露していました。

▲4六銀左に対する「△3八歩」は四段時代に披露した新手で、「そういや昔の本のインタビューでその経緯を読んだな」と思い、当時の「将棋世界」をゴソゴソやっていたら「一日の研究時間は10時間(!)」という記事を見つけました。

この記事を読んだときに「10時間勉強でも勝率がイマイチ(デビュー後数年は勝ち星も特に目立っていなかなったです)だなぁ」と、今振り返ると失礼極まりないことを思っていた記憶がありますが、いまや押しも押されぬB1組のトップ棋士となりました。やはり何事も積み重ねが大切ですね(反省)。

後半の自戦記と次の一手がページの半分以上を占めているので、講座編のボリューム不足が否めません。また、文庫サイズになると「バサッ」と机や床に見開き状態で置けないので、盤に並べるときに不便だったりします。

初版の単行本化から15年近く経つ本ですので、読み物として楽しむにはよいかもしれませんが、定跡などの勉強として使うなら他の本をオススメします。

シリーズ次巻となる「振り飛車党宣言 Vol.2 新感覚の三間飛車」では三間のスペシャリスト石川、中田(功)、安西の三氏が対急戦、左美濃、居飛車穴熊の新研究を披露します。