高橋道雄:最新矢倉戦法 徹底研究▲3七銀戦法

定跡の最先端を行く▲6五歩早突き型も解説
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評価:B
対象者:5級〜三段
発売日:2007年8月

A級カムバックを果たし(追記:現在は再びB1です)、まだまだ力のあるところを見せ付けた感のある「地道流」高橋九段による矢倉定跡(▲3七銀戦法)の解説書です。

全222ページの3章構成で、見開きに盤面図が4枚配置されています。また、章末には復習用の「次の一手」形式の問題が用意されています。

第1章 現代矢倉の基本
第2章 現代矢倉の攻め方
第3章 知っておきたいその他の現代矢倉

第2章 △9五歩対策より 図は△9五歩まで
△8五歩と△9五歩の2大有力手が考えられる局面で後者を選択した場面です。先手の狙いは▲2五桂〜▲3五歩のお馴染みの仕掛けですが、上図の局面ですぐに▲2五桂と跳ねると、以下△4五歩▲同銀△1九角成▲4六角△同馬▲同歩に△5九角と打たれて先手が忙しくなります。

そこで、▲2五桂に代わり、▲6五歩と突く「宮田新手(若手ホープの宮田敦五段が発案)」が▲3七銀戦法に新しい息吹を吹き込んだ新手です。以下、△8五歩には今度こそ▲2五桂が成立します。以下、△4五歩なら▲同銀△1九角成▲5七角が次の▲6六角と相手玉を覗く手を見て、先手優勢となります。

多くのテーマが、既刊となっている「羽生の頭脳 5巻」、「森下卓:現代矢倉の思想」などとかぶりますが、上記の▲6五歩型の解説が「最新矢倉」という本書のタイトルに恥じない内容となっています。

近年は振り飛車を扱った棋書の方が人気があるということで、矢倉の専門書はご無沙汰でしたので、この形が解説されている本は「将棋定跡最先端 居飛車編」と「最新戦法の話」くらいしかなく、矢倉本で登場したのは本書が初めてとなります。

創玄社の本らしくなく(笑)、先手・後手に肩入れせずに公平な立場での定跡解説に徹している点が評価できます。高橋九段の解説は、前述の「羽生の頭脳」や「現代矢倉の思想」のスタイルに近く、本筋だけを追っているためわかりやすいのが特徴です。

▲6五歩の「宮田新手」の攻防は21ページを使って定跡を解説していますので、この形を勉強したい方は買って損することはないでしょう。