所司和晴:将棋定跡最先端 振り飛車編

三間飛車道場未掲載の中田功XPも紹介
この本の詳細をAmazonで見る

評価:B
対象者:初段〜五段
発売日:2006年3月

所司七段による居飛車対振り飛車の最新定跡の解説書で、「将棋定跡最先端 居飛車編」の続編となっています。

まえがきに『最新型に絞った解説となっていますので、本書だけ読みますの基本があまり載っていない不満があるかもしれません。』とありますが、とりあえず初手からテーマ図に至るまでの手順は掲載されています。

ただし、この前書きの通り、定跡の太い幹から伸びた枝葉の一部(最新型)だけを紹介しているので、既に「四間飛車道場」などを読んで定跡にある程度精通していることが、読み手の前提として求められるでしょう。

全239ページの4章構成、盤面図は見開きに4枚となっています。目次は以下の通りです。

第1章 四間飛車
▲左4六銀戦法、▲4五歩早仕掛け、居飛車穴熊対△4四銀型、藤井システム

第2章 中飛車
ゴキゲン中飛車対▲2五歩保留型、先手角交換型中飛車

第3章 三間飛車
居飛車穴熊対△5三銀型

第4章 向かい飛車
▲2五歩保留型対△5四歩・3三角型

第5章 相振り飛車
▲6七銀型向かい飛車

居飛車穴熊vs三間飛車の変化より

第3章 三間飛車より:図は▲6八角まで
以前レビューした島八段の名著「島ノート 振り飛車編」で、『中田功XP』として紹介されていた形からの変化。三間飛車側は玉の囲いを後回しにして、△6五歩と6筋の位を取るのがポイントで、▲6六銀〜7七銀引きを許してはいけません。△6五歩以下は▲3六歩△9五歩▲7八金△6三金に▲4六銀△8五桂が変化の一例ですが、本書ではこの辺を詳しく解説していきます。

第1章の居飛車穴熊対四間飛車△4四銀型では、居飛車が松尾流穴熊を目指して▲6八銀と引いた瞬間に、△5五歩と仕掛ける一時流行した形を解説しています。この場面は、端歩の突き合い以外は「四間飛車道場 第12巻 続・居飛穴」と同じ局面で、そちらでは先手良しとなる手順があったのですが、本書では後手の新手のため「先手不満」と結論付けられており、先手の新たな攻め筋が紹介されています。

この部分は渡辺竜王の著書「四間飛車破り 居飛車穴熊編」でも、「形勢不明」として途中で終了していましたので、居飛車党の方は本屋で目を通しておくといいかもしれません。

第4章では角道を開けたまま、向かい飛車にして穴熊に潜る(居飛車は銀冠)形の定跡手順を見ていきます。これはゴキゲン中飛車が流行した中で派生した比較的新しい戦法ですので、解説した棋書もありません(ないはず)。そういった意味では貴重かもしれません。

全体的に作りが無機質なために、読んでいてグッと惹きつけられる所がないのがこのシリーズの欠点です。「最前線物語2」のように『どの棋戦で、誰が指したのか』を簡潔に記すだけで随分違うと思うのですが…

本書は最新の定跡を売りにしているので、評価はいつ読んだかによって大分違ってくると思います。