島朗:島ノート 振り飛車編

居飛車編の予定は全く無いとか
この本の詳細をAmazonで見る

評価:A
対象者:3級〜六段
発売日:2002年12月

ここ数年でダントツに売れた将棋の本を挙げるとしたら、間違いなく本書でしょう。

内容はサブタイトル通り、居飛車対振り飛車の序盤研究をまとめた本なのですが、まさに島八段渾身の一作といえるほど中身の濃いものとなっています。とにかく、本の分厚さに圧倒されます(何と500ページ近いです(笑)。

<向かい飛車の章より>

<先手藤井システムより>

本書の構成は以下のとおりです。カッコ内は、そこに掲載されている作戦の数です。

(1)向かい飛車の章
@鬼殺し向かい飛車(2種類)
A新・升田流向かい飛車(2種類)
B△3二金型向かい飛車(3種類)
C△3二銀型向かい飛車
Dメリケン向かい飛車

(2)三間飛車の章
@新・早石田(4種類)
A新・石田流(3種類)
B中田XP(中田功六段考案の穴熊崩し)

(3)ゴキゲン中飛車の章
@ゴキゲン中飛車(丸山ワクチン、森下流ゴキゲン破り、飛先即交換型など7種類)
Aカメレオン戦法(基本は中飛車だが、相手次第で他の戦法に変化する変幻自在の戦法)

(4)四間飛車の章
@藤井システム対穴熊(△3二銀型、△4三銀型、△3二飛型など8種類)
A藤井システム対カマボコ(2種類)
B藤井システム対急戦(右4六銀など2種類)
C鈴木システム(対イビ穴銀冠作戦を3種類)
D相穴熊(3種類)
E右四間(4種類)
F居飛車定跡外戦法(新・鳥指し、新・かまいたち、地下鉄飛車など4種類)

以上のようになっていますが、とても全部は紹介しきれません(笑)。「島さん、本当にここまで本に書いていいの?」と思ってしまうほど、プロ間の最新研究が細かな変化まで解説されています。

文章も読みやすく、各章ともまず「基本」で大まかな手順や狙いを学び、「発展」でさらに詳しく変化を掘り下げるといった感じになっています。

藤井システムの詳細な研究はもちろんのこと、聞いたことのない奇襲戦法も充実しています。

著者自身、「従来は奇襲戦法と見られていた戦法が、調べれば調べるほど本格的なもので驚いた」と語っているほど、この本に出てくる奇襲戦法もかなりお勧めできます。

ただ、本書はかなり難易度が高く、間違いなく有段者向けの本でしょう。級位者の方にはかなり敷居が高いです。読み流すだけで理解するのはまず無理で、盤と駒を使ってじっくり並べないといけないでしょう。

また、著者の島八段の研究された分野のみ採り上げられているため、掲載されている戦法にちょっと偏りがあります(特に急戦の項は、ほとんどありません)。

本書は、振り飛車党のみならず、振り飛車対策に頭を悩ましている居飛車党の方にも勉強になる一冊です。

発売から一年半ほど経ちますが、いまだにタイトル戦において、この島ノートに掲載されている形が出現することを考えると、「バイブル」といわれるのもうなづける内容になっています。

評価は、その研究の深さと内容の偏りという両面性を考慮して、A評価にしておきます。