将棋・ひと目の定跡 局面の急所がわかる200問

居飛車・振り飛車の基本定跡からポイントを紹介
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評価:C
対象者:10級〜3級
発売日:2007年7月

ひと目の寄せ」や「ひと目の端攻め」など、文庫本サイズの問題集として刊行されている「将棋・ひと目〜」シリーズの定跡版です。相居飛車・居飛車vs振り飛車の対抗型・相振り飛車の代表的な定跡手順の中からポイントとなる局面をピックアップして、次の一手形式で出題しています。

下に例題として掲載している2番目の問題のように、有段者クラスの方でも少し難しいだろうなという問題もありますが、ほとんどの問題は初・中級者向けの内容となっています。

全416ページの三章構成。問題図の下にはヒントと難易度が記されており、解説ページには盤面図が2枚配置されています。目次は以下のようになっています。

第1章 相居飛車:相掛かり・横歩取り・矢倉・角換わり…ほか
第2章 居飛車 VS 振り飛車:三間飛車・中飛車・向かい飛車・四間飛車
第3章 相振り飛車

矢倉の駒組みの注意点

第56問 矢倉 序盤の基本 その3より 図は▲4八銀まで
矢倉戦の序盤における駒組みから。普通に見える▲4八銀ですがこれは大悪手です。随分昔にプロの佐藤大五郎九段も公式戦でこの手を指して30手くらいで投了していた記憶があります。居飛車党なら誰もが一回は通る道(?)。

ここでは△8六歩▲同歩△同飛(!)が決め手となります。以下▲同銀は△8八角成ですし、▲同銀に代えて▲7八金と頑張るのも(第57問)、△7七角成▲同桂△8七銀(▲同角は△8九飛成)となり先手持ちこたえられません。

左辺はいなして指す

第120問 コーヤン流三間飛車 その4より 図は△8五歩まで
後手が8筋突破を目指して△8六歩と突いたのに対し、▲同歩△同角▲8八飛△8六歩(△7七角成は▲8二飛成と飛車が素抜かれます)としたところです。
▲4六銀と左銀を絶好のポジションに据えられるの三間飛車の強み。左辺は軽くいなして、あくまでも盤面の右半分の厚みで勝負します。

ここでの正解手順は▲5五歩△同歩▲5四歩です。この垂れ歩を放置していると▲8六角と強く角交換された後に▲5三歩成と絶好の位置にと金を作られてしまいます。▲5四歩以下は△3一角▲5九角△8六歩▲5八飛と進みます。

なお、最初の▲5五歩を放置して△7七角成と飛車先突破を急ぐのは、▲同桂△8六歩▲6五桂△8七歩成▲5八飛となり、桂馬に逃げられたうえに次の▲5三桂「不成」の金の両取りが残ってしまいます。

本シリーズは上記の「ひと目の端攻め」と「ひと目の寄せ」など良作が揃っていますが、本書は微妙です。その理由として、一冊に全部の戦型を詰め込んだため、カバーしきれない局面が多いという点があげられます。特に仕掛け前後はその一手だけでなく、重要な手が続きますので、その辺が結構飛ばされているのが残念です。

また、解説が各問題につき1ページしかないため(しかも大部分は2枚の盤面図で埋まっています)、『級位者の方なら選んでしまいそうな他の手』がどうしてダメなのかがほとんど解説されていません。

構成に関しても、刊行時点で既にブーム真っ盛りの相振り飛車もわずか13題と中途半端なのも残念。出版社の事情があるのでしょうけれど、それぞれの章ごとに1冊用意してくれていたほうが、充実したものが出来上がったのではと思います。
(ex:手筋の達人 矢倉編手筋の達人 Vol.2 振り飛車編

問題となる局面は、駒組みの初期と仕掛け前後が中心となっていますが、あくまでも本書のタイトルにあるように『局面の急所』のみをピックアップしていますので、その局面に至るまでの定跡手順は全く掲載されていません。他の棋書で基本定跡を勉強した後の確認用ということですね。