手筋の達人 Vol.2 振り飛車の手筋が満載

居飛車党の方にもオススメです
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評価:B
対象者:10級〜三段
発売日:2005年6月

本書は、1992、93年に刊行された「感動!手筋術1 振り飛車編」と「感動!手筋術2 居飛車編」を一冊にまとめて文庫復刊したもので、シリーズとしては以前レビューした「手筋の達人 矢倉の手筋が満載」の続編となります。

前半で対居飛車急戦・持久戦における振り飛車側の手筋を、後半で対振り飛車における居飛車の手筋を次の一手形式の問題(計210問)で勉強していきます。

後半は居飛車側の立場で考えます(盤面もちゃんとひっくり返されています)ので、タイトルの「振り飛車の手筋が満載」というのは少し紛らわしいですね。

全438ページと圧倒的なボリュームの2部構成で、1ページ1問、次のページで盤面図を3枚使って解答とその解説が掲載されています。

第1部 振り飛車編
序盤・中盤・終盤の手筋術

第2部 対振り飛車編
序盤・中盤・終盤の手筋術

着想の転換がテーマです

第1部 中盤の手筋術より:図は△6四歩まで
▲同歩と取るのは先手の飛角銀に対して後手の飛角銀桂のぶつかり合いとなり、後手の思う壺です。相手の勢力が強いところで戦うより、手薄な方面に目をつけるのがここでのポイントです。

正解は▲8五歩と角取りに突き出す一手です。以下、△同桂に▲8八飛と回り、戦場を6筋から8筋に変えようとするのが好着想となります。▲8八飛に△7七桂成は▲8四飛、また△6五歩なら▲8五飛△6六歩▲8四飛でいずれも先手の飛車が捌けて優勢となります。

必至を掛けます

第2部 終盤の手筋術より:図は△6一金まで
龍を逃げていては攻防共に見込みがなくなります。この部分図は有名で▲6二金△同金に▲7一銀で必至が掛かることを是非覚えてください。▲7一銀に△6一金打は、▲6二銀成△同金に▲7一金の尻金で簡単に詰みますし、△4四角と受けるのも、▲6二銀成△同角に▲8二金(これまた手筋の一着)△同玉▲6二龍△7二金▲7一角でいずれも即詰みとなります。

シリーズ前巻「手筋の達人 矢倉の手筋が満載」は定跡形における特定の手筋よりも、多少形が違っても使える普遍的な手筋が多かったのですが、本書ではどちらかというとその逆になっています。

この辺は好みによるでしょうが、定跡形における次の一手問題は類書が多いので、個人的には前巻の方が貴重で実用度が高いと思います。
ただし、第2部の「対振り飛車における終盤術」は囲い崩しの必修手筋が揃っていますので、初級〜中級者の方は大いに参考になるでしょう。

また、1ページに盤面図を3枚使った丁寧な解説、438ページというボリュームの割には良心的な価格(1050円)の2点を考えると、持っていて損はない一冊と言えるでしょう。

なお、著者の武者野七段は初段を目指す方を対象とした問題集「将棋 実力初段検定―読みと手筋と大局観」を本書と同じ「MYCOM将棋文庫SP」から出していますので、中級者の方はそちらも参考にしてみてください。