手筋の達人 矢倉の手筋が満載

次の一手形式の問題が200題
この本の詳細をAmazonで見る

評価:A
対象者:10級〜三段
発売日:2005年2月

本書は武者野六段が著し、1990年に出版された「手筋の達人 矢倉基本編」と「応用編」を復刊して1冊にまとめた問題集です。

テーマとなるのは矢倉戦に頻出する手筋の基礎とその応用です。攻めには飛車角銀桂香が参加し、玉の寄せ方も縦横斜めとバリエーションに富んでいるため、登場する手筋も必然的に多くなります。

「部分的定跡」とも言える矢倉の手筋を基礎100問、応用100問の計200問の次の一手形式の問題で学んでいきます。反復練習に耐えうるこのボリュームと良心的な価格(1050円)でなかなかの良書といえます。

全420ページの6章構成となっています。目次は以下の通りです。

第1章 駒組みと仕掛け―基本編
第2章 攻防の妙技―基本編
第3章 寄せとしのぎ―基本編
第4章 駒組みと仕掛け―応用編
第5章 攻防の妙技―応用編
第6章 寄せとしのぎ―応用編

攻めの続行を図る好手は?

第46問より:図は△6五歩まで
まず▲3三歩と叩いて△同桂と3筋に駒を呼び込んでおいてから、薄くなった1筋へ向けて▲1三桂成と攻めるのがポイントです。以下△同香▲1四歩△同歩▲同香と端を破って先手優勢です。この「桂の逆モーション」は応用範囲が広いので、ぜひとも覚えてください。

ガジガジ流の攻めにはどう受ける?

第142問より:図は△6六銀まで
ガツン!と銀をぶち込まれたましたが、ここで慌てて▲同銀や▲同金は△同歩でさらに攻めを呼び込む結果となり最悪です。ここでは▲6八歩と低く受けるのが正解です。以下△6七銀成なら▲同歩でぴったりですし、△7七銀成も▲同金寄りで後手の6五の当たりから遠ざかるので好都合です。

矢倉は堅城ですが、駒の特性を生かした手筋で弱体化させることができます。逆に守っているときは金銀三枚の囲いだからといって過信してはいけません。
本書では矢倉戦の駒組における注意点、仕掛けの形、スピード重視の攻め方、凌ぎ方など幅広い局面での手筋がカバーされています。

解答・解説のページには盤面図が2枚掲載されているので、矢倉を始めて勉強する初級者の方でも十分に読みこなせると思います。また、その解説も手順や他の候補手を掲載するだけでなく、『中終盤に突入しようかという局面で、△6五歩に対してとる手がうまくいかない場合は、手抜きしてどうかを考えるより、堂々と▲6五同歩ととって戦う手段はないかと考えるべきです。(P236)』、『中盤戦が深まっていくにつれ、速度という要素が大事になってきます。相手の駒の勢いを殺して、味方の駒の勢いを増すように指していくことが要求されてくる訳です。(P284)』など、矢倉を指すうえで指針となる考え方なども触れていますので、非常に参考になります。

通勤や通学時間などに読む本の中にローテーション入りさせて繰り返し読めば、矢倉の頻出手筋は一通りマスターできるでしょう。インプットが完了すれば、あとは実戦でアウトプットするのみです。頑張りましょう。

続編となる「手筋の達人 Vol.2 振り飛車の手筋が満載」では、居飛車と振り飛車のそれぞれの立場から、対抗型における必修手筋を勉強していきます。