将棋・ひと目の寄せ 終盤で必ず生きる200問

詰め将棋・必死・凌ぎのテクニックを学べます
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評価:A
対象者:10級〜初段
発売日:2008年7月

ひと目の手筋」」や「ひと目の端攻め」など、本サイトでも既に何冊かレビューしている「将棋・ひと目〜」シリーズ。今回紹介する「ひと目の寄せ」は「詰め将棋」・「必至のかけ方」・「受け方」など、終盤の基本テクニックの習得がテーマとなっています。

この分野での不朽の名作「寄せの手筋168」と「凌ぎの手筋186」(共に絶版)から初・中位者向けの問題をまとめて1冊にしたような感じです。同じMYCOMの書籍ではこちらも絶版ですが、「終盤の定跡 基本編」が非常に近いです。

416ページの全5章構成。実戦を意識した第5章の双玉問題を除いては、局面を理解しやすいように部分図による出題形式となっています。目次は以下の通りです。

第1章 ひと目の詰み(基本の詰み形 実戦の詰み)
第2章 ひと目の必死(基本の必死形 実戦の必死)
第3章 ひと目の受け(詰みを逃れる 詰めろを逃れる)
第4章 力試し?何を持てば詰む?(持駒問題)
第5章 ひと目の攻防手(双玉問題)

詰め将棋

第30問 基本の詰み形
▲4二金は△2二玉と逃げられ▲3一角と追撃しても△1二玉で捕まりません。少し手筋を勉強し始めた方なら初手▲4一角が見えるかと思います。これは取れば▲4二金の頭金で詰みますが、やはり△2二玉とかわされて後が続きません。

ここでの正解は歩頭に打つ▲2四桂です。△2二玉とかわすのは▲3一角△同玉▲3二金で詰みますので△同歩ですが、そこで▲4一角△2二玉(△同玉は▲4二金)に▲2三金としてやはり詰みとなります。

ここでのポイントは『桂馬で王手して同歩と取らせて、駒を打つスペース(この例題では2三の地点)を作る』ことです。「開き王手」で寄せを狙う筋などでは、玉の退路封鎖としてもこの歩頭の桂馬がよく登場します。

囲い崩しの定番

第139問 実戦の必死
金を龍で剥がしたところ、△2二銀と打って穴熊の修復を狙ってきたシチュエーション。居飛車・振り飛車を問わずに対穴熊戦で頻出する局面ですね。

ここで▲3三角とただで捨てるのが、是非とも覚えておきたい穴熊崩しの必殺技です。△同銀の一手に▲3二金と薄くなった2一の地点を狙いを定めるのが後続手。後手は△2二金と受けますが、▲3三金として必死です(△同金は▲2二銀まで)。

詰みを逆算して合駒を選択

第153問 詰みを逃れる
便宜上、持ち駒は駒台から溢れそうなほど豊富にありますが、飛金銀香や角による▲7九合駒では△6八銀▲同玉△6七金▲7九玉△7八金…と強引に玉を引っ張り出されて詰まされてしまいます。

唯一、詰みを逃れることができる合駒は▲7九桂です。桂馬の場合、上記の手順で進んだ場合に△6八銀▲同玉のあとの△6七金に▲同桂と取ることができるのがポイント。

裸の一段玉に一間飛車+金銀3枚で攻められた場合の桂合いは定番ですが、合駒を選択するときの考え方は勝又六段の「実戦に役立つ詰め手筋」でも詳しくレクチャーされていますので、中級〜有段者の方はそちらも参考にしてみてください。

出題される局面図は「矢倉」「美濃囲い」「船囲い」「穴熊」など、定番の囲い別に数問ずつ用意されており、全編にわたって実戦を意識したつくりとなっています。

また、第4章の「何を持てば詰む?(全20問)」では、攻め手の持ち駒を3つ選択肢で掲載しています。正解は1つとは限らないので、20問分でも実際にはその3倍の量の読みが必要となり、見た目以上のボリューム感もあります。この選択肢を提示する手法は「谷川流寄せの法則」をはじめ、寄せの本ではたまに見られますね。

初・中級者の方の場合、本を繰り返し読むことにより短期間でレベルアップを実感できるのは「寄せ」と「受け」です。本書はその両方を詰め込んだ欲張りな一冊ですが、初段レベルの終盤力を養成するのに必要な必修テクニックはほとんどカバーされています。

既にこの分野での本を数冊お持ちの方にとっては見慣れた問題ばかりのはずですから、改めて本書を手に取る必要はないと思いますが、終盤の基本を書籍で勉強したことの無い方にとっては非常に有用な一冊になるでしょう。