桐谷広人:歩の玉手箱 楽しく読める手筋の宝庫

一番使う機会が多い駒だけに手筋の習得は必須
この本の詳細をAmazonで見る

評価:A
対象者:11級〜5級
発売日:2003年10月

パソコンで棋譜検索なんて便利なものがなかった時代に、盤面図を見るだけで「これは○×年の王将戦一次予選の誰々戦と同じ進行です。ここから先手はこう指して〜」と瞬時にわかることから『コンピューター桐谷』との異名をとった桐谷六段による「歩の手筋」の入門書です。

1995年に同タイトルで出版され、その後、絶版となりましたが、2003年にMYCOMの「将棋文庫」として復刊されました。再び絶版になりましたが、大型書店などではまだ残っているようです。

解説されている手筋は「継ぎ歩」「焦点の歩」「ダンスの歩」「成捨ての歩」などの有名どころから、「争点がえの歩」「中合いの歩」などのやや高度なものまでが網羅されています。

まず最初に部分図や仮想図でテーマとなる手筋の概要を簡潔に説明し、次のページからはプロの実戦で現れたその手筋を盤面図で解説し、最後に「次ぎの一手」形式の問題で復習していきます。

全204ページで紹介されている手筋の数は30個となっています。

銀交換になると先手よさそうにみえますが…

蓋歩のページより:図は△3四歩まで
同じ銀でも攻めの駒と守りの駒の交換は、守備駒をはがせる攻め手が有利ですが、この局面はどうでしょうか?銀交換を狙って先手は当然▲2四歩としますが、放置して△3五歩と強く銀を取ってしまうのが強手です。以下▲2三歩成としますが、△同金▲同飛成に△2四歩と龍の後から歩で蓋をするのが狙いでした。龍の退路が絶たれたため、次に△3四銀打とされると、▲2二龍△同飛の飛車角交換が避けられません。先手の陣形は飛車打ちにものすごく弱い形なので、後手有利となります。

この蓋歩の手筋は特に「菊水矢倉」で頻出で、以前レビューした「アマの将棋ここが悪い!次の一手形式1」のページにも盤面図で解説していますので、参考にしてみてください。

プロの実戦を題材にしてるというとなんだか難しいような気がしますが、見開きに盤面図が4枚配置されていますし、解説されている手順は三〜五手と短いので、途中で挫折することはまずないでしょう。

入門レベルの本でありながら、プロの実戦で現れた手筋が理解できますので、妙な自信もムクムクとわいてきます(笑)。

歩は将棋の駒の中で最も使う機会の多い駒だけに、その手筋をマスターしておけば勝率はグッと上がりますので、しっかりと勉強しましょう。

歩の手筋を扱った棋書には「羽生の法則 歩の手筋」、「小林健二:歩の徹底活用術」もありますので、本屋さんで手にとって自分に合ってそうな方選ぶと良いでしょう。