小林健二:歩の徹底活用術

実戦形式で歩の手筋を解説しています
この本の詳細をAmazonで見る

評価:B
対象者:8級〜初段
発売日:2000年7月

「スーパー四間飛車」でお馴染みの小林九段による歩の手筋の解説書です。
表紙からは初心者向けの印象を受けると思いますが、部分図ではなく実戦形式の局面をテーマ図にしており、また五〜七手一組となる手筋を解説していますので、内容はかなり本格的です。

よくある「次の一手」形式の問題ではなく、盤面図と手順を一緒に掲載して、そのポイントとなる手筋の解説を読み進めるというスタイルになっています。

全206ページの2章構成で、見開きに盤面図が4枚配置されています。章末には復習用の問題が20問(計40問)出題されています。

第1章 攻めの手筋の解説
第2章 受けの手筋の解説

対急戦矢倉からの変化

第1章 攻めの手筋より:図は△3五同歩まで
上図は、先手が3筋の歩を突き捨てたところです。▲1五歩〜1三歩や▲3三歩の叩きなど、有力な攻め筋が色々ありますが、後手の△5四銀が浮きゴマになっている点に注目します。

ここでは▲2四歩△同歩▲同飛△4四歩に▲3三歩が最も有効な攻めとなります。▲2四歩からの十字飛車狙いに、後手も△4四歩と飛車の横利きを止めますが、▲3三歩が焦点の歩です。△同角や△同金では▲2一飛成ですので、△同桂となりますが、▲3四歩で桂得が約束されて先手優勢となります。

各テーマが見開きで完結するので、非常に読みやすいのが特徴です。一手指して「ハイ終わり」ではなく、五〜七手くらいで1セットになっている手筋が多いので「手の連動」を意識して読むことができ、応用力も身につくでしょう。
そのテーマ図も矢倉、美濃、穴熊、舟囲いなどの実戦形に基づいた頻出度の高いものばかりですので、即効力も期待できます。

第1章の38ページの局面図は「実戦!スーパー四間飛車」のページに掲載している局面図と全く同じですので、難易度がやや高いテーマは小林九段の実戦から持ってきているのだと思われます。

歩は一番使う機会が多く、その分手筋の種類も多い駒なので、基本をしっかりとマスターしておくことが大切です。実戦形式で歩の手筋を解説した本には「歩の玉手箱」や「手筋の教科書 歩・香・桂編」(共に絶版)などありますが、それらを読んだことのない方なら大いに勉強になると思います。

シリーズ第2弾の「飛角桂香の徹底活用術」では、テーマとなる駒が増えたものの、ページ数はほぼ同じのため内容が薄くなっています。シリーズで買うなら第2巻は飛ばした方がいいでしょう。