小林健二:飛角桂香の徹底活用術

1冊に詰め込みすぎた分、内容が浅いです
この本の詳細をAmazonで見る

評価:C
対象者:8級〜初段
発売日:2000年8月

シリーズ第1弾「歩の徹底活用術」では、歩の手筋に絞って解説されていましたが、本巻では飛車・角・桂馬・香車と4つの駒の手筋を実戦形式の局面図をもとに読み進めていきます。

ページ数はほぼ同じまま、テーマとなっている駒が1つから4つに増えた分、内容が薄くなっている感が否めません。

各駒に割り当てられているページが減るわけですので、必修手筋をより厳選して掲載しなくてはならないと思うのですが、角の手筋では▲7六歩△3四歩▲2二角成△同銀に▲4五角と打つ「筋違い角」が最初のテーマになっているなど、手筋ではない無駄(?)なページもチラホラ登場しています。

全222ページの4章構成で、見開きに盤面図が4枚配置されています。章末には復習用の「次の一手」問題が12問(計48問)出題されています。

第1章 飛車の手筋
第2章 角の手筋
第3章 桂馬の手筋
第4章 香車の手筋

居飛車VS振り飛車の対抗型で頻出の局面ですね

第4章 香車の手筋より:図は△8九飛成まで
上図は対居飛車急戦の終盤です。相手は舟囲いと言えども金銀4枚のため、急所を見極めないと攻略は程遠い感じです。手薄となっている2筋に目をつけ、▲2六香(次に▲2三香成△同玉▲2一龍がある)は狙いとしては悪くないものの、ここでは△7一歩とガッチリ受けられて手も足も出なくなります。

ここでは玉、金、桂と駒が3枚利いているところに、▲3三香と放り込むのが急所の一撃です。△同玉は▲2一龍、△同桂は▲1一龍、また△同金も▲4一角△4二玉▲5二角成△同玉▲2一龍となり先手優勢となります。

一段飛車から舟囲いの3三の地点へ駒を打つ手筋は頻出なので、知らなかった方は是非とも覚えておきましょう。

前巻がなかなかの出来だっただけに、「薄めすぎたカルピス」のようになってしまった本書は、残念ながらオススメできません。この内容なら章末の復習問題を無くして、その48ページを講座にまわした方がはるかに良かったでしょう。

田丸昇:小駒の必勝テクニック」も4つの駒(金・銀・桂・香)の手筋を1冊にまとめていますが、あちらはテーマ図の解説だけでなく、同じ手筋を応用できる他の盤面図も合わせて掲載・解説している点が秀逸で、スカスカ感がありません。

本書でも小林九段の実戦からテーマ図に選ばれているものがいくつかあるようで、「スーパー穴熊 完結編」の自戦記で掲載されていた将棋が使われていました。

面白いのは全く同じ局面なのに、本書では「穴熊(先手)ペース」と解説されているのに、「スーパー穴熊」では「互角」と微妙に形勢判断が違う点です。やっぱり、手筋本だと「先手良し」もしくは「先手ペース」と有利になるように補正しておかないと体裁が悪いのかな?

シリーズ最終巻の「玉金銀の徹底活用術」では、金と銀による寄せを中心とした手筋を解説しています。