小林健二:玉金銀の徹底活用術

寄せに関するテーマ図が多くなっています
この本の詳細をAmazonで見る

評価:B
対象者:8級〜初段
発売日:2000年12月

前巻「飛角桂香の徹底活用術」では、大駒2枚と桂馬・香車の手筋を見ていきましたが、シリーズ最終巻の本巻では玉・金・銀がテーマとなっています。

玉の手筋の章では、導入部で舟囲い・美濃囲い・矢倉・穴熊の囲い方といった初心者向けの内容が掲載されていますが、金と銀は終盤の寄せに欠かせない駒ということもあり、そちらの章では中級〜上級者でも役に立つ終盤の手筋が多く採り上げられています。

第1章 銀の手筋
第2章 金の手筋
第3章 玉の手筋

「金は斜めに誘え」を地でいく手筋です

第1章 銀の手筋より:図は△4四同歩まで
この局面図に至るまでの手順は書かれていませんが、おそらく▲4四角とバッサリ切って銀を入手したところだと推測されます。ここで龍が逃げているようだと△4七成桂で一手負けとなりますので、決めるならこの瞬間しかありません。

ここでは▲2二銀△同金▲3三金の三手一組が絶妙の手順で、後手玉は必至となります。最後の▲3三金が「金は斜めに誘え」の格言を地でいった好手です。
この手筋の応用編としては、対居飛車穴熊で▲3一龍に△2二銀と弾かれた際に、▲3三角(タダ捨て)△同銀▲3二金△2二金▲3三金という有名な必至手順もありますので、あわせて覚えておくと勝ち星に貢献してくれるでしょう。

「金は斜めに誘え」を地でいく手筋です

第2章 金の手筋より:図は△8八まで
先手玉には詰めろがかかっている一方、後手玉には斜めに利く駒がないために詰みはありません。一見すると絶体絶命のようですが、ここで▲7九金と打つのが習いある凌ぎの手筋です。△同銀不成は詰めろがほどけますので、▲3二馬で先手勝ちです。

また△7九同金は▲8八玉と銀を取ってしまえば、次に▲3一銀で後手玉は詰みますし、先手には詰みがありませんので、こちらも先手の勝ちとなります。

この局面図を問題として出されれば、ほとんどの方が▲7九金を発見できると思います。実戦で数手前からこの手を見越して指せるようになりたいですね〜

全体の70%が終盤をテーマにした「寄せ方・受け方の本」のような構成になっていますので、既に類書をお持ちの方なら、必ずどこかで見た局面図ばかりだと思います。それぞれの駒の特性を利用した中盤の手筋はほとんど掲載されていないので、本書が気になっている方はその辺は注意が必要です。

なお121ページにある第2図の金の位置が違う(○6七金 ×5七金)ために、解説の手順が成立していないという誤植があるので、お持ちの方はご確認ください。