高橋道雄:将棋手筋の教科書 歩・香・桂編

全三冊シリーズの第一巻となります
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評価:B
対象者:10級〜3級
発売日:2006年11月

地道流・高橋九段が、駒別の手筋を初〜中級者向けに解説したシリーズ三部作(第3巻は囲い崩しですので厳密に言うと「駒別」ではありません)の第一弾です。

高橋九段といえば、駒音コンサートで迷彩服(!)を着た奥さん、お嬢さんと一緒に特撮(宇宙戦隊なんとか系)の歌を披露していた姿が強烈で、イメージとあまりにもかけ離れすぎていてショックを受けた覚えがあります。

現在は一人身のようですが、「将棋世界」の人気コーナー「タカミチの実戦コーナー」のコメントを読むと、結婚には相当懲りたとのこと(笑)。

本書は「次の一手」形式の問題集ではなく、講座形式で読み進めていくスタイルとなっており、見開き右側のページでまず部分図を使って基本手筋を、そして左側のページで実戦形式の盤面図を使って応用手筋を解説しています。

実戦図を交えて解説する構成は、小林健二九段の「歩の徹底活用術」、田丸昇八段の「小駒の必勝テクニック」と同じですね。

全214ページの3部構成で、見開きに盤面図が4〜5枚配置されています。

第1部 歩の手筋
前進の歩 / 歩交換 / 合わせ歩 / 焦点の歩 / と金のおそはや / 垂れ歩…ほか
第2部 香の手筋
田楽刺し / 下段の香 / 二段香 / 底歩の天敵 / つなぎの香 / 犠打の香打ち…ほか
第3部 桂の手筋
理想の跳躍 / 飛び越しの桂 / 両取りの桂 / 控えの桂打ち / 継ぎ桂…ほか
練習問題(30問)

第1部 歩の手筋 「叩きの歩」より:図は△7五桂まで
対米長流急戦矢倉の定跡とも言える局面ですが、ここで▲7五同歩は△8六歩▲同歩△6六角▲同金△8六飛と十字飛車を決められて先手不利となってしまいます。

この形では▲2四歩△同歩▲2三歩と薄い2筋を攻めるのが筋となります。以下、△2三同金ならば強く▲2四角と飛び出して、△同金▲同飛で後手は2筋を受けにくく先手優勢です。

手筋の基本形は部分図で、応用は実戦図という2段階の構成がわかりやすく、手筋の入門書としてちょうどいい感じになっています。

特に重要な手筋は見開きで完結させずに、3ページ目以降も応用手筋の解説が続きます(ex:成り捨ての歩は9ページ用意)。その解説も単に手順についてだけでなく、「将棋は玉から遠い駒を、いかに遊ばせずに活用していくか、ということがとても大事。その観点から6七の銀を使う意味で、○図では▲6六銀打とする手が本筋ともいえますが、ここでは別の攻め方でいってみましょう。」といったような、その局面におけるアプローチの仕方や考え方などにも触れている点が参考になります。

全体では歩のページが約80ページと圧倒的に多く、香車・桂馬はそれぞれ、約20ページ、約35ページとなっています。巻末の次の一手問題は省いて、香車と桂馬のページにまわしてもよかったかなと思います。

掲載されている盤面図が大きく、キャラクター(駒に眼と眉毛が描かれています)も登場することから、対象は小〜中学生くらいと推測できますが、大人でも違和感なく読み進めることができます。

本シリーズは出版社の山海堂が倒産したために、発売後1年で絶版になってしまっています。ネットでは入手が困難ですが、大型書店ではまだ残っているところがあるようなので、内容が気になる方は書店でご確認ください。

次巻の「将棋手筋の教科書 銀・金・角・飛編」では小駒を扱った本巻から変わって、飛車・角・金・銀の重量級の駒を使った手筋を勉強していきます。