小林健二:力戦!スーパー振り飛車

立石流の部分は貴重かも
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評価:C
対象者:5級〜二段
発売日:1997年8月

スーパー四間飛車」で四間飛車をテーマにした著書に一区切りをつけた小林九段が次に目をつけたのが(笑)、石田流・立石流・坂田流向かい飛車など「力戦系」にカテゴライズ(石田流は力戦なのか?)される振り飛車戦法です。

全223ページの4章構成で、見開きに盤面図が3〜4枚配置されています。目次は以下の通りです。

  • 第1章 石田流三間飛車(第1節:定跡編 第2節:実戦編)
  • 第2章 立石流四間飛車
  • 第3章 坂田流向かい飛車
  • 第4章 対 右四間飛車
代表的な狙い筋

第1章 石田流三間飛車 定跡編より:図は△3二玉まで
ここで▲3六飛と回って3四の歩を露骨に狙いにいくのが受けにくい一手です。
▲3六飛以下、△8八角成▲同銀△3三玉で大丈夫のように思えますが、▲7七角が後続手となります(下図を参照)。

意外に受からない筋

▲7七角に対して@△4四歩は▲同角(!)△同玉▲4六飛△4五角(玉が逃げるのは▲4一飛成)▲同飛△同玉▲3六角で「間接王手銀取り」+「馬作り確定」で駒損ながら、先手指しやすい流れとなります。

また▲7七角に対してA△4四角は以下、▲同角△同歩▲3四飛(!)△同玉▲1六角で決まります。対して△2五角の合駒は▲同角△同玉に▲1六角ですし、△2五飛の合駒はじっと▲2六歩で痺れます。

先後の違いで大きく展開が大きく異なる石田流に関しては2節に分けて詳しく解説(全90ページ)。特に▲石田流のハマリ形とされる筋(上図1枚目を参照)をはじめ、この戦法の入門者が知っておきたい最低限の定跡はこの第1節で一通りカバーされています。

また、第2節の実戦編は対▲加藤(一)九段、対△内藤九段、対▲東七段、対▲南九段の計4局を自戦記形式で解説しています。ほかの章でも実戦形式の解説がありますが、小林九段以外の将棋も含まれているほか、あくまでも駒組や仕掛け前後の形を紹介することを目的としており、初手からの本格的な自戦記となっているのは第1章の石田流のみです。

第2章の立石流に関しては解説している棋書が少ないこともあり貴重といえますが、第2章以降は前章の石田流と違い、定跡解説は軽く触れるだけですので、各戦法のある程度の知識がないと少ししんどいかもしれません。

むしろ、立石流の方は後手が右の金を6一のまま動かさずに「角交換後の打ち込みに備えながら、3・4筋の位を取って玉頭に圧力をかける」、あるいは▲4四飛→3四飛を防ぐために、「早めの角交換から△3三角と打ち、▲4四飛と浮かせない」などの居飛車の対策が参考になります。

最終章は全く力戦ではないですが、対四間の人気戦法である右四間飛車の受け方について解説。従来の△5四銀・3三角型で迎え撃つ形だけでなく、柔軟性のある△4三銀・2二角型や、▲居飛車が穴熊を狙った場合には△6五銀のぶつけで駒組を制限したり(▲屋敷 △谷川戦)、早めの▲3六歩から桂跳ねを見せて△居飛車の穴熊を牽制する(▲藤井 △深浦戦)などの比較的新しい対策も紹介されています。

個人的に参考になったのは石田流と立石流の章ですが、既に絶版となっていますので、あちこちに探して買う必要はないと思います。石田流を解説した棋書は本書以降にも「島ノート 振り飛車編」や「石田流の極意 先手番の最強戦法」などが出ていますし、立石流は「変幻自在!! 3三角戦法」などを読んで、金を力強く繰り出す力戦を勉強すれば居飛車に対策を取られても互角に戦うことができるでしょう。