鈴木大介:石田流の極意―先手番の最強戦法

鈴木八段の十八番戦法を解説
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評価:B
対象者:7級〜初段
発売日:2006年10月

2005年の第77期棋聖戦でタイトル戦開幕を前に「石田流で勝負を挑む」と宣言した鈴木八段による同戦法の基本定跡解説書です。ちなみに佐藤康光棋聖に挑んだこの勝負は0-3のストレート負けでした。

鈴木八段による石田流の著書は「決定版 石田流新定跡」もあります。掲載手順に若干の差はあるものの、本書は既に絶版になっていますので、ファンの方はそちらをお薦めいたします。

全222ページで見開きに局面図が4枚の五章構成となっており、先手石田流に対する居飛車側の対抗策は以下の通りです。

序章 基本図までの駒組み
第一章 対8五歩早突き型
第二章 対棒金
第三章 対左美濃
第四章 対居飛車穴熊
第五章 対その他の戦法

第一章 対8五歩早突き型より:図は▲5六角まで

対8五歩早突き型では、初手▲7六歩△3四歩▲7五歩△8四歩▲7八飛△8五歩の局面から「升田式石田流」の▲4八玉といきなり▲7四歩と仕掛けるいわゆる「鈴木新手」が解説されています。上の図はその変化からですが、△9二角に代えて△6五角も当然あります(本書では△9二角のみ)。

この形は、この後居飛車側が△1二飛と手持ちの飛車を受けに打ったりと、知らないとなかなか指せない手順が多く出てきますので、参考になるでしょう。

第二章の対棒金戦では、ポイントとして△8三金には▲7八飛の「久保新手」と▲6七金と上がる受け、また▲6五歩と角道を通して捌きに持ち込めるように、△7九銀を不用意に動かさないことが挙げられています。

この章に関しては、以前レビューした「島ノート」にも久保流対棒金戦法として詳しく掲載されていますので、読み比べてみるのもよいでしょう。

第五章のその他の戦法ではアマチュアでは良く用いられる飛車先不突の右四間穴熊に対する受け方、角交換型石田流、対銀冠が解説されています。

鈴木八段の著書の中ではかなり本格的な部類に入ると思います。他の著書だと、狙い筋をわかりやすくするために都合のいいような駒の配置(先手四間穴熊に対して後手居飛車が斜め棒銀の急戦なのに△1四歩が突いてあったり、など)や他の候補手をカットしてあったりしたのですが、本書はそういうことはありません。既に絶版になっているのが残念ですね。