谷川浩司の戦いの絶対感覚

光速流は攻めだけでなく受けも超一流
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評価:A
対象者:三段以上
発売日:2003年4月

羽生善治の戦いの絶対感覚」に続く本書はシリーズ最終巻となります。「光速の寄せ」で有名な谷川浩司王位が、自分の将棋の土台になっている感覚についてまとめています。

内容は、@序盤の絶対感覚、A中盤の絶対感覚、B終盤の絶対感覚の3章と巻末の参考棋譜で構成されています。

第41期王位戦 第5局より ▲谷川△羽生:図は△5一銀まで
後手の羽生竜王(当時)が6二の右銀を△5一銀と引いて、次に△4二銀右〜2二銀〜3一銀右と固める手を見せたところです。この進行を許しては、せっかく取った4筋の位が活きてきません。

谷川九段は4筋の位の力を具現化する一手として▲4八飛を選びました。対して△4二銀右▲3六金△3五歩なら、▲4四歩△3四金▲4五金△同桂▲同銀△同金▲同飛△3四銀に飛車取りを放置して、▲1四歩(!)と端から強襲する手があります。先手の角が直射しているので、後手も受けきるのが大変です。

それぞれ谷川王位ご自身の実戦譜からピックアップした局面をテーマ図にして、そこでの指し手の判断材料になった「読み」や「大局観」等が詳しく解説されています。

光速の寄せに代表されるような鋭い攻めの手ばかりでなく、しっかりとした受けの手などもテーマに挙げられていて、谷川王位の将棋感覚をかなり広範囲で感じることができるのが、この本のセールスポイントです。特に終盤の部分は一見の価値があります。

ただ、谷川王位ほどの強い方の感覚を、一冊の本に著わそうというのですから、当然本の難易度は上がっています。級位者の方には、かなり難しい内容ではないでしょうか。

本書は上級者〜有段者の方にオススメです。谷川王位の将棋感に触れてみて、その感覚を自分に取り入れることができれば、必ず対局の際の読みや構想等に変化が現れるはずです。ぜひ挑戦してみましょう。

谷川王位の将棋を終盤の部分だけに特化した類書には「光速の終盤術」が、また年度別の全対局を自戦記と棋譜解説で堪能したい方には「新・谷川浩司全集」も出版されていますので、そちらも参考にしてみてください。(投稿:Shigekun二段)