神谷広志:奇襲虎の巻 明日からすぐ勝てる

ハメ手狙いからカニカニ銀のような本格戦法まで紹介
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評価:B
対象者:11級〜初段
発売日:2003年5月

1986年から1987年にかけて28連勝という前人未到(現在も破られていません)の記録を打ち立てた神谷広志七段が著した奇襲戦法の本です。

下の目次を見るだけで「こりゃ駄目だろ〜」とハッキリわかるものから、「鳥刺し」や「カニカニ銀(升田幸三賞受賞)」などかなり本格的な戦法まで、玉石混淆といった感じです。

『奇襲戦法という性格上、多少の無理もしているので、双方最善の応酬というわけにはいかない』とあらかじめ、断りがしてあります。

全225ページの4章構成で、見開きに盤面図が4枚配置されています。また、ページごとに神谷七段を模した漫画(全然似てない^^;)と、その横に『ふふふ、はまったな』などの不気味なコメントが掲載されています。

第1章 振り飛車編
四間飛車独走銀 / ハメ手中飛車 / 原始中飛車 /
阪田流向飛車 / 鳥刺し / 新型鳥刺し / 角頭歩突き戦法
第2章 袖飛車編
玉頭強襲作戦 / △7四歩戦法
第3章 矢倉編
カニカニ銀 / 対矢倉一直線棒銀
第4章 相掛かり編
タテ歩棒銀 / 宇宙戦法 / 鎖鎌銀 / ▲5八玉戦法(新塚田スペシャル)

角がぶつからないので後手は捌きに苦しみます

第1章 振り飛車編 鳥刺しより:図は▲5七銀左まで
幕末の棋聖といわれた天野宗歩も愛用したといわれる歴史ある戦法「鳥刺し」です。図で△7二銀と美濃囲いを完成させる手などには、早速▲3五歩△同歩▲4六銀と仕掛けていきます。山田定跡と似た形ですが、先手は角道を開けていないため、後手としては捌きに苦しむことになります。

銀の進出を防ぐ△4五歩が自然に見えますが、以下▲5八金右△7二銀▲7九角△5四歩▲4六歩△同歩▲3五歩△同歩▲4六銀△3六歩▲4七銀〜と2枚の銀を使ってこの後も盛り上がっていき、制空権を握ります。

この鳥刺しは島八段の名著「島ノート 振り飛車編」で、アマ高段者の方でも勉強になるほど詳しく解説されているので、この戦法でレベルアップを図りたい人は是非読んでみてください。P455に『四間飛車にとって鳥刺しは、対策の決定版が容易に見つからない戦法でないかと思う。』と書かれていますので、既に奇襲の枠を超えた本格的な戦法といえるでしょう。

他に実用性の高いものとしては、カニカニ銀がオススメです。これは児玉六段が創案した対矢倉における戦法で、居玉の状態から飛角銀銀桂という超重量級の攻めを繰り出します。

専門書が既に絶版となっている「必殺!カニカニ銀―究極の二枚銀戦法」しかないので難点ですが、ほとんどの方が正しい受け方を知らない(あるいは忘れている)はずなので、現在でもバリバリ通用するはずです。

一方、「ハメ手中飛車」というネーミングからして一発狙いの戦法の解説では、『初対面の相手にこの戦法を試す場合、基本図までの手はなるべく弱そうな手つきで指すこと』という凄いアドバイスまで掲載されています(笑)。なんだネット将棋で使えないじゃん!