中川大輔:右四間で攻めつぶす本

左美濃や居飛車穴熊にする形は掲載されていません
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評価:C
対象者:8級〜初段
発売日:2006年12月

我々アマチュアに人気の高い右四間戦法の基本定跡を、その力強い指し回しで人気の中川大輔七段が解説しています。

「四間飛車を指しこなす本」シリーズと同様に、次の一手形式で読み進めていき、最終ページで本を逆さまにしてまた続きを読むスタイルとなっています。

中川七段と言えば、昔は研究会の仲間との旅行先でも将棋盤を取り出すほどの学術肌タイプだったと15年位前の将棋世界に書いてありましたが、随分イメージが変わりましたねぇ。同門の先崎八段のボクシングといい、米長門下は格闘技に縁があるのでしょうか?

第一章 四間飛車を攻めつぶす
第二章 矢倉を攻めつぶす
第三章 プロレベルの右四間

第一章より:図は▲1七桂馬まで
序盤で▲1六歩と突いた手が△1五角を防ぎつつ、▲1七桂と跳ねる余地も作った一石二鳥の一手です。一手の無駄もない最短の攻撃陣形を敷いた先手は次に▲2五桂〜△2二角〜▲4五歩以下の攻めを狙います。

上記の目次をご覧になるとわかると思いますが、四間飛車に対する右四間だけではなく、対矢倉の右四間も解説されています。

そのため、それぞれの章に割り当てられているページ数が限定されており、対四間飛車では図のような急戦しか掲載されていません。『穴熊や美濃などに固める手もあるが、本書は速攻で攻めつぶすことを云々』とありますが、本のタイトルだけ見てネットで注文された方のなかには残念だったという人もいると思います。

急戦と持久戦を手堅くおさえるなら、以前レビューした「三浦流右四間の極意−四間飛車をやっつけろ(絶版)」や「四間飛車道場 第16巻 右四間飛車」などで補う必要があると思います。

第二章と第三章の対矢倉の右四間はある程度玉を固めて仕掛けるタイプと居玉(相手も居玉)で仕掛ける速攻型が解説されています。

相手の金銀4枚+角が利いているところに、仕掛けるので一気につぶせるわけではありませんが、どちらも飛車角銀桂が攻めに参加する理想的な布陣ですので、攻め好きの人にはピッタリの戦法だと思います。

特に居玉型は双方の急所(5七と5三の地点)に敵駒がのっかった状態で戦うので、非常にスリリングな展開になるでしょう。こちらのほうもさらに詳しく知るなら「矢倉急戦道場 棒銀&右四間」などがお勧めです。

本書は対四間飛車の持久戦型右四間が解説されていないために「浅く広く」ではなく「浅く狭く」なってしまった感があります。淺川書房の本にしてはかなり残念な部類に入ります。