四間飛車道場 第14巻 藤井システム封じ

▲3六歩を突いて、急戦を匂わせるのがポイント
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評価:B
対象者:5級〜六段
発売日:2003年12月

前巻では、藤井システムに対してまともに居飛車穴熊を組みに行った場合の攻防を解説しましたが、本書は居飛車側が対策を講じて、藤井システムを牽制する指し方がテーマとなっています。具体的な手順は後ほど。

219ページ、見開きに局面図が6枚の全六章構成で、内容は以下の通りになっています。

第一章 基本図までの駒組み
第二章 9八香型対3二飛型
第三章 6六歩型対3二飛型
第四章 1六歩型対3二飛型
第五章 6二玉・6四歩型藤井システム
第六章 3二銀・6二玉型藤井システム

第一章 基本図までの駒組みより:図は▲3六歩まで

上の図における▲3六歩が本書のタイトルとなっている「藤井システム封じ」の骨子となる一手です。これは▲3六歩を突くことにより▲3五歩の急戦を匂わせて、四間飛車側に△6二玉を強要させる狙いがあります。

△6二玉に代えて△7四歩などの手だと、後手玉が戦場となる3筋に近いため当たりが強くなり、以下▲3五歩△同歩▲4六銀△3四銀▲3八飛△4五歩▲3三角成△同桂▲3五銀△同銀▲同飛△4四角▲3九飛△9九角成▲8八銀で先手優勢です。

また、△6二玉を強要させることにより藤井システムにおける6筋からの攻撃を弱くする狙いもあります(やはり玉の位置が戦場に近いため)。じゃあ、▲3六歩と牽制することにより居飛車側は穴熊に組めるのかと言うと、そんな単純な話ではなく振り飛車側にも対抗策があります。この辺が藤井システムの対応力、懐の深さです。下の図がその具体策です。

第一章 基本図までの駒組みより:図は△3二飛まで

振り飛車側の対抗策とは、▲9八香と居飛車が穴熊を組みに行った不安定な瞬間を突いて△3二飛と振りなおし早めに突かれた▲3六歩をとがめにいく指しかたです。

本書ではこの△3二飛に対してA.▲5五歩と中央の位を取る手とB.▲6六銀、C.7八銀、D.9九玉の4つの手を解説しています。また、△3二飛を警戒し▲9八香に代えて▲6六歩と居飛車穴熊が組めるまではおとなしくする作戦も紹介されています(結果的には作戦負けになる)。

最終章の「3二銀・6二玉型藤井システム」は以前レビューした名著「島ノート」内の「藤井システム VS 穴熊 その進化の究極を追う」とほぼ同じ内容となっています。

第五・六章を除いては、居飛車側はそれなりに玉を固めて攻めることが出来るので、対藤井システムの戦いでありがちな「攻めつぶされるか、耐え凌ぐか」というフラストレーションがたまりやすい展開に疲れた方には、参考になると思います。

手の狙いがわかりやすい戦形ということもあり、難解な東大将棋ブックスのシリーズの中では、比較的読みやすい部類に入ります。

次巻の「四間飛車道場 第15巻 藤井システム破り」では藤井システムに対して急戦を挑む手順を解説しています。