中飛車道場 第3巻 ゴキゲン中飛車力戦

丸山ワクチンも解説されていますがやや古い
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評価:C
対象者:5級〜六段
発売日:2004年5月

シリーズ第三弾はゴキゲン中飛車の対策として、当時プロ間で最も指されていた▲7八金型とそれに次いで流行していた「丸山ワクチン」がテーマとなっています。
ただし、現在はほとんど現れない形が多いので、これから購入を考えている人にはあまり役には立たないでしょう。

全219ページの8章構成で、見開きに盤面図が6枚配置されています。

第1章 基本図までの駒組み
第2章 ▲7八金型△6二玉型
第3章 ▲7八金型△5五歩型
第4章 ▲6八金型△5五歩型
第5章 ▲6八金型△6二玉型
第6章 角交換型▲7八銀型
第7章 角交換型▲8八銀型
第8章 角交換型▲6八玉型

先手が▲2二角成と角交換に出て、▲7八銀とあがる形は丸山九段が多用していることから「丸山ワクチン」と呼ばれています。将来左美濃に組む含みがあり、現在もその進化を続けています。

△5二飛とゴキゲン中飛車が明らかになった局面で▲7八金と上がり、▲2四歩からの飛車交換の際に8八の地点に利かす(角交換から△3三角を防ぐ)指し方、あるいは中央に備える▲6八金型が全体の2/3のページを使って解説されています。

出版当時はこの指し方が有力視されていたものの、前者は中央に弱く、後者はシリーズ第1巻「中飛車道場 ゴキゲン中飛車超急戦」のような超急戦を狙われやすく、そうなった場合には▲5八金右型よりも劣るということで現在は全くと言っていいほど指されなくなりました。

第6〜8章では居飛車から角交換をして▲4六歩〜▲4七銀とし、ゴキゲン中飛車側に5筋での争点を与えない指し方、いわゆる「丸山ワクチン」を見ていきます。

この丸山ワクチンは対ゴキ中の最有力とされている指し方で、プロ間の間で研究が進んでいます。その流れは勝又六段の「最新戦法の話」の中で整理されていますが、ここで復習してみると…1.▲7七銀から矢倉に組む→2.▲6八玉と上がり美濃囲いを目指す→3.鈴木流△3三角で風向きが変わる→4.新丸山ワクチン▲7八銀が登場し、美濃囲いへの手順が変わる→5.谷川流△5五歩が現れ、△5六歩を狙われる→6.佐藤新手▲9六歩で△5五歩を牽制→7.遠山流△7二金が登場し、現在に至る…となっています。

しかし、本書で解説されている丸山ワクチンは上記の1〜4となっているため、最新型を勉強したい方にはオススメできません。書店でパラパラっと中身を見て「お!丸山ワクチン解説されてんじゃん」と思って購入すると後で後悔するかもしれませんので、注意してください。

出版当時は、本書の中身が最新形ということで需要もあったと思いますが、2007年現在ではコレクター以外の方は特別に読む必要のない本だと思います。

第1巻から第3巻まではゴキゲン中飛車をテーマにしてきましたが、シリーズ最終巻となる「中飛車道場 第4巻 6四銀・ツノ銀」では関西の矢倉六段が得意とする矢倉流中飛車や風車などを解説しています。