金子タカシ:凌ぎの手筋186

受けの手筋を網羅した名著も、絶版で入手困難です
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評価:A
対象者:5級〜六段
発売日:1990年5月

以前レビューした「寄せの手筋168」、「美濃崩し180」と同じく、高橋書店&金子タカシ氏のコンビによる終盤力養成本です。

「寄せの手筋168」・「美濃崩し180」が攻め手からの視点に対し、本書では終盤における自玉周辺の『受け』の手筋の習得がテーマとなっています。

三冊とも人気・評価の高い好著ですが残念ながら絶版です。入手困難度としては「寄せの手筋168」<「凌ぎの手筋168」<「美濃崩し180」といったところでしょうか。

206ページ、片面に問題図が2枚、反対側に回答図が2枚の全四章構成です。

第1章 詰みを逃れる合い駒テクニック 問題数70
第2章 攻撃を考えた合い駒テクニック 問題数16
第3章 必死を逃れる凌ぎテクニック  問題数80
第4章 攻撃を考えた凌ぎテクニック  問題数20

初級レベル

即詰みをを逃れる合い駒のテクニックより
前に利く駒(歩や香)などで▲1八に受けると、△同香成▲同玉△2七金▲1九玉以下、合い駒の駒を打たれて詰んでしまいます。正解は▲1八桂です。みなさんは正解できましたか。これは一番簡単な問題ですので、次の問題をチャレンジしてください。難関レベルです。

直ぐに解けたらプロ棋士レベル

即詰みをを逃れる合い駒のテクニックより
何をやっても詰まされそうな感じのこの局面。ひねった▲1五飛の移動合いは、△1七馬▲2五玉△3五馬▲1六玉△1七とでやはり詰んでしまいます。正解は▲1四角の中合いです。△同香と呼び込んでから▲1五飛と移動合いをすれば、先ほどの変化の△3五馬の際に▲1四玉と逃げることができます。

犠打で一手稼ぐ常套手段

必死を逃れる凌ぎテクニックより
先手玉には次に△2八龍以下の簡単な詰みがあります。ここでは▲4九金と犠打を放つのが正解です。△同龍でも△とでも、詰めろが消えます。穴熊でよく出る手筋です。続いては難関レベルです。

これで逃れるのはマジシャン?

必死を逃れる凌ぎテクニックより
正解手順は▲1六歩△同歩▲1七角△1一香▲3九角△同と▲2八玉です。
△2八銀成の詰みを防ぐためには▲1六歩しかありませんね。そして△同歩に対して歩頭の▲1七角で2八の地点に駒の利きを足します。
対して△同歩成は▲同玉と上部脱出されますので、△1一香としますが、そこで▲3九銀と要の駒を外して、△同と(詰めろ)に▲2八玉と寄れば脱出成功です。

上記の姉妹書二冊と同じく、問題数が豊富で反復練習にもってこいの内容となっていますが、難易度は本書が上です。本書に載っている「銀の中合い」などが、時間の短いネット将棋で指せる人はアマトップでしょう。

受けの手筋がこれほどスッキリ、数多くまとめられている本は他にはないので、古本屋等で運良く見つけられた方は買っておいて損はないと思います(ネットオークションだと定価の倍以上ってのが多いです)。

他の棋書でさらに受けを勉強したい方は、実戦型の盤面図で受けのコツを解説した中村修八段の「不思議流受けのヒント」も参考にしてみてください。