佐藤康光の居飛車の手筋 Vol.2 強襲・矢倉編

アマに人気の右四間飛車の受け方も解説
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評価:B
対象者:10級〜2級
発売日:2007年9月

佐藤康光の居飛車の手筋 Vol.1 四間飛車粉砕編」に続くシリーズ第2弾のテーマは矢倉です。現代矢倉の主流である「3七銀戦法」をはじめ、ネット将棋などで人気の「右四間飛車」(を受ける)の定跡と寄せ方を次の一手形式で解説していきます。

本シリーズはこれ以降「Vol.3 対中飛車・三間飛車編」、「Vol.4 角換わり、横歩取り編」が刊行される予定でしたが、出版元の山海堂が倒産してしまったので、残念ながら本巻で終了のようです。「近刊予定」と巻末に書いてあったので、佐藤棋聖の原稿自体は既に出来上がっているんでしょうか?原稿料の行方が気になります…

全328ページのたっぷり150問。各章の最初で「特徴と駒組」というタイトルで、テーマ図までの手順と基本方針を簡潔に触れた後に問題がスタートします。

1.3七銀戦法
2.森下システム
3.対右四間飛車
4.対左美濃急戦

受けつぶしを狙います

第101問 対右四間飛車より:図は△6五歩まで
後手番ながら主導権を握れる対矢倉の右四間です。まだ後手の桂馬が攻めに参加していませんが、その攻撃力は侮れません。ここでの候補手は1.▲6五同歩 2.▲5七銀上 3.▲3五歩の3つ。1の▲6五同歩は素直すぎで、以下△8八角成▲同玉△6五銀▲6六歩△同銀▲同金△3九角と攻められて先手不利です。

正解は2.▲5七銀上です。△6六歩の取り込みには▲同銀△6五歩に▲5五銀左と強くぶつけるのが、この形で定跡となっている受け方です。最後の▲5五銀左が知らないとちょっと指しにくい手ですが、初見の方は是非とも覚えておいてください(この辺は「矢倉急戦道場 棒銀&右四間」が詳しい)。

手番は全て先手なので、▲3七銀戦法と森下システムの章では定跡からの仕掛け、そしてそのまま攻め倒す手順のみがテーマとなっており、後手番での視点はありません。

前巻に引き続いて、アマチュアに人気の戦法(本巻では右四間に対する受け方)をちゃんとテーマに入れているところが高ポイントで、時間の短いネット将棋で右四間に攻めつぶされている方には参考になると思います。

ただ、第1章の3七銀戦法で先手が▲3五歩△同歩▲同角△3四歩(不急の一手)▲4六角から▲3六銀と作戦勝ちを収めることが出来た場合の解説で、後手が先手の角の睨みから桂馬を守るために△8三飛と浮き、さらに△9二香とする局面図が不自然です。

以下の先手の攻め筋は矢倉共通の手順ですので学ぶところは多いですが、この後手の陣形はもう少し考えてほしいところです。同じ3七銀戦法の章の中では、▲6五歩と突くプロの最新形も解説されているだけに、そのギャップが大きすぎます。

タイトルは「〜手筋」となっていますが、どちらかというと定跡書に近い感じです。ただし、後半が右四間と左美濃急戦のため、相矢倉の基本習得はこの一冊じゃかなり不足気味です。多少古くなりますが、「羽生の頭脳(5巻と6巻で3七銀戦法と森下システムを解説)」などで補ってやる必要があると思います。

また、矢倉における攻防の必修手筋を次の一手形式の問題(全200題)で習得する武者野勝巳:「手筋の達人 矢倉の手筋が満載」も良書となっていますので、矢倉の勉強を始めた方は参考になさってみてください。