佐藤康光の居飛車の手筋 Vol.1 四間飛車粉砕編

立石流や飯島流引き角戦法も解説
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評価:B
対象者:10級〜2級
発売日:2007年6月

対四間飛車における居飛車急戦・持久戦の定跡、さらに「居飛車よし」となってからの具体的な寄せ方を次の一手形式で読み進めていく問題集です。

テーマとなっている戦型は▲4五歩急戦や四間飛車穴熊、立石流、そして近年注目を集めている飯島流引き角戦法など、私たちアマチュアに人気の高いものだけをピックアップしている点が嬉しいところ。

全328ページと値段の割にはボリューム感のある作りになっています。問題のページに大きな盤面図が1枚とヒント、選択肢(ない場合もあります)が掲載されており、次のページで正解図と参考図を元に佐藤棋聖がポイントを解説していきます。

1.急戦で攻める
2.斜め棒銀
3.穴熊対策の銀冠
4.居飛車穴熊
5.立石流対策
6.飯島流「引き角戦法」

対四間飛車穴熊に有力な銀冠

第51問 穴熊対策の銀冠より:図は△5四歩まで
選択肢は1.▲8五歩 2.▲2四歩 3.6六銀となっています。最初の▲8五歩は、将来▲8四歩と突き捨てて穴熊の急所である8三の地点を攻めたり、あるいは▲8六角とのぞく手を見せたものです。しかし、この局面での▲8五歩は△5五歩と仕掛けられて、以下▲同歩△同銀▲5六歩△6六歩▲6八金引△4六歩と一方的に攻め込まれてしまいます。3の▲6六銀はこの△5五歩を防いだものですが、△5三銀と引かれると次の△4六歩で薄くなった4筋を狙われてしまいます。

正解は▲2四歩と仕掛ける手となります。△同角は▲2二歩△3三桂▲2一歩成で、後手の4四の銀が捌きにくく、飛車も動けません。△同角に代えて、△同歩としますが、そこで▲3五歩が後続手(これが上図に続く第52問です)となります。以下、△同歩は▲3四歩なので△同銀の一手に▲3三角成△同桂▲8八角△4三飛に▲3六歩と攻め続けます。(この辺りは「四間飛車道場 銀冠vs穴熊」が詳しい)

各章の最初でその戦法(囲い)の特徴と狙いを簡単に触れて、基本図に至るまでの手順を掲載してから最初の問題が始まります。進行は一手毎に問題が出題されるスタイルとなっており、この辺の構成や難易度は「四間飛車を指しこなす本」などでお馴染みの「〜指しこなす本」シリーズと非常に似ています。

また、問題図の下にあるヒントの『第〜問の△6五歩に代え、△5四歩と進んだ局面です。どう指しますか?』という口調もそっくりで、担当者は相当意識して作ったものと思われます。

問題と次の問題の局面図がバラバラではなく、一本線として繋がっているので、定跡の手の流れをイメージとして頭に残すことができます。出題数も150問と通常の50%増量(当社比)と満足できるボリュームです。

それでも一手一手の進行のため、ページの都合で紹介できなかった手順なども多くありますが、初級者の方ならまずこれでしっかりと基本をおさえて、それから本格的な定跡書でステップアップを図ればいいと思います。

シリーズ続編となる「佐藤康光の居飛車の手筋 Vol.2 強襲・矢倉編」では、右四間飛車を含む矢倉戦での定跡を見ていきます。