将棋 実力初段検定―読みと手筋と大局観

NHK将棋講座のテキスト化
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評価:A
対象者:8級〜2級
発売日:2007年1月

「NHK将棋講座」のテキスト誌上で連載された段位認定問題を単行本化した「武者野勝己のこれなら実力初段 Vol1&2(1996年刊行)」のうち、Vol.2の方を「MYCOM将棋文庫SPシリーズ」として復刊したものです。

本書が従来の段位認定の問題集と大きく違う点は、初段に求められる棋力を「読み」「必至」「大局観」「悪手探し」「定跡」「手筋」の6つにカテゴライズして、問題を出題している点です。

そして、成績を各チャプター(一般棋書でいうところの「章」。全12チャプター)ごとに用意された円グラフに書き込むことにより、自分の弱点はどこにあるのかを客観的に確認できるようになっています。

例として、「読み」「必死」「大局観」「手筋」のジャンルから問題を選んで下に掲載しましたので、初段を目指す方、あるいは本書のレベルを確認したい方は参考にしてみてください。

なお、文庫本としての復刊に際しては、読みやすくするために図面を増量したそうですが、本レビューは原本の方を基に書いていますので、どれくらい増量されたのかはわかりませんでした。

△6四歩は悪手です

「読み」の問題より:図は△6四歩まで
問題では3手先まで示すことが求められています。正解は▲4六銀△3四銀(または△4二角)▲5五銀です。

開き王手を含みにします

「必至」の問題より
▲2四桂△同歩▲2二金△1三玉▲3四銀の5手必至です。初手▲2四桂に対して△同馬は▲2二金△1三玉▲3二金の開き王手で簡単な詰みとなりますので、△同歩は絶対です。

最後の▲3四銀に△同馬や同飛は玉の逃走ルート(3四の地点)が塞がれますので、▲3二金△2三玉▲2二馬で詰みですし、△3一飛と角を外すのも▲2三銀成で詰みとなります。

壁銀では強く戦えません

「大局観」の問題より:図は△7六歩まで
正解は△7三桂〜6五歩と攻められる前に、▲7七歩と合わせて、以下△同歩成▲同銀として先手陣の弱点である「壁銀」を解消しながら、6筋を補強する手です。

銀冠の弱点を突く

「手筋」の問題より:図は△5五歩まで
▲5五同歩は△5六歩の垂れ歩があります。ここは二枚飛車の力を活かすため▲2五歩が正着となります。対して△同歩なら、▲2四歩△同銀▲2三歩△同玉▲3一飛成で後手陣は崩壊です。

したがって、▲2五歩には△4二銀が最善の抵抗ですが、やはり▲2四歩と取り込んで、以下△同銀▲2三歩△同玉▲2五歩△3三銀引▲2四香と打ち込んで、先手優勢となります

「必至」・「定跡」・「手筋」の分野は本で勉強すれば、基礎の大部分はマスターできるので、本を買って勉強している人にとっては比較的簡単だと思います。

一方、大局観の分野は、実戦で初めて現れる「未知の局面」での力を試されるので、実力の差が出やすいところでしょう。有段者の方でも、結構難しいんじゃないかという問題もチラホラありました。

偏りなく力を試される良問が揃っていますので、初段を目指す方はもちろん、基本を再確認したい有段者にもオススメです。なお、著者の武者野七段は「手筋の達人」シリーズも書いていますので、手筋の基本をマスターしたい方はそちらもチェックしてみてください。