中原誠:自然流勝負の一手

十六世名人の妙技を堪能
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評価:B
対象者:5級〜四段
発売日:1996年3月

本書は『サンデー毎日』に連載(当時)の「自然流 この一手」というコーナーから、H6〜7年度の70回分を収録・刊行したものです。

書名から「次の一手形式の問題集」と思うかもしれませんが、内容は中原永世十段の実戦から勝負どころの局面を集め、局面の判断・候補手・指した手の善悪を解説するというスタイルになっています。

「戦いの絶対感覚」シリーズのテーマを中・終盤に絞って解説を簡素化したもの、あるいはミニ自戦記とイメージしてもらっても大丈夫だと思います。なお姉妹書として「自然流 この一手」も既刊となっています。

221ページ、見開きに局面図が2枚(片側に問題図、翌2ページを解説)の全70テーマ図。

トッププロの中・終盤がテーマとだけあって、難解な局面が多いです。実際に中原永世十段が正着を逃した局面がいくつかあります。

高段者以外の方は、候補手を自分の頭の中で一つ二つ挙げ、軽く読みを入れた後にページをめくって解説を読む、というスタイルが一番しっくりくるかもしれません。

「戦いの絶対感覚」は本筋以外の手の解説も緻密でしたが、本書は要所だけを押さえて手短に済ませてありますので、解説自体は非常にわかりやすいです。

ただ、難点が全くないわけではなく、@後手を持って考える場合でも、局面図はそのまま(盤面上方)なので、慣れるまでちょっと煩わしい(普通は便宜上盤面を逆にする) A連載されていたコーナーをそのまま刊行したもので、他の本のように書き下ろしのちょっとしたエッセイや加筆が無い…などの点が気になりました。

なお、2011年には氏が集大成と位置づけている「中原誠名局集」が刊行されています。棋譜を並べて本格的に中原将棋を勉強したい方にはそちらもオススメです。