中原誠:自然流 この一手

中・終盤の局面のポイントを解説
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評価:B
対象者:5級〜四段
発売日:1994年12月

「サンデー毎日」で中原永世十段が連載していた「自然流この一手」の平成4年8月30日号から平成6年2月6日号までの70回分を単行本化したものです。

タイトルを見て受けるイメージとは異なり、実際は永世十段の対局から勝負の分かれ目となった中・終盤だけを解説をした「ミニ自戦記」といった構成になっています。

全220ページで70局を解説(=1局あたり3ページ)しています。対戦相手は羽生・森内・佐藤・谷川・郷田・米長・村山・島・南…ほかと、連載当時のトップ棋士が中心となっています。

実際の進行を示す盤面図は1ページにつき1枚掲載されていますが、3ページ目の最後の1枚は参考図となっています。参考図は「▲〜の手ではこうしておけばよかった」「○×の局面で△〜と指されていれば難しいながらも後手がよかった」などの変化手順の途中や結果の理解を助けるものです。

中原さん得意の対四間の銀冠

テーマ2 穴熊崩し 第5期竜王戦より(▲中原 △福崎):図は△6一金まで
福崎王座(当時)の十八番戦法の振り飛車穴熊に対して、中原永世十段も得意の銀冠で対抗した中盤です。

ここで永世十段が選んだ手は▲8四歩。以下△同歩▲同銀△8三歩▲同銀成(!)△同銀▲8四歩△7四銀▲7五歩△6三銀▲8三歩成△8二銀▲同と△同金▲8五金と進み、駒の損得なしに穴熊を薄くすることに成功しました。

△8二銀のところで△8二歩と駒を惜しんで受けるのは、以下▲9二と△同玉▲9四歩△同歩▲8五金で穴熊玉は端が薄いため、先手優勢です。

好局だけを10〜15局セレクトした自戦記も棋力向上には重要でがが、中原永世十段の将棋はアマチュアには指し方や狙い筋がわかりにくい戦法や形の悪さにこだわらない独特の将棋が目立ちます。

したがって1局の勝負のポイントだけを3ページ程度で解説して、数多くの将棋(70局)を掲載して解説する本書のスタイルが正解だったと思います。

連載時に前もって掲載する対局を指定されていたかどうかは定かではありませんが、本書では永世十段の勝局だけでなく、負けた将棋も数多く登場します。

中原ファンの方だけでなく、トッププロ棋士の大局観や勝負どころでの指し回しなどを数多く勉強したい中〜有段者の方なら楽しく読めると思います。

本書の続編として「自然流勝負の一手」も刊行されていますので、本書が気に入った方はそちらも参考にしてみてください。