羽生善治:読む将棋百科

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評価:-
対象者:初心〜10級
発売日:2009年12月

本書は「送りの手筋」・「ヒモを付ける」などの将棋用語や「居玉形は飛より角」・「大駒は近づけて受けよ」などの格言、代表的な戦法・囲い名、タイトル戦・棋戦、名棋士・対局の宿など、将棋に関するあらゆる用語を解説したもので、以前レビューした「日本将棋用語事典」の守備範囲を拡げたような一冊です。

「著者:羽生善治」となっていますが、羽生さん独自の文章は各用語の末尾にある「羽生の眼」という補足・感想のような短い部分だけですので、羽生さんのファンだからという理由で本書の購入を考えている方は注意が必要かもしれません。

全277ページの6章構成です。戦法・囲いをはじめ、駒の動き方、「垂れ歩」「捨て駒」など、文章よりも盤面図で見た方が理解しやすい用語の解説にはキチンと盤面図が掲載されています。目次は以下の通りです。

  1. 戦法・囲い
  2. 将棋用語
  3. 用具
  4. 格言
  5. タイトル戦・棋戦
  6. 名棋士・対局の宿
終盤で登場した絶妙手

第6章 名棋士・対局の宿より ▲羽生 △久保
「なんでこんな局面図が用語集に?」と疑問に思われるでしょうが、これは「名棋士・対局の宿」の章で登場する「ホテルイタリア軒」という用語の解説の一部なのです。

ホテルイタリア軒はこの局面が現れた第26期棋王戦の第四局の対局場でした。
ここで羽生さんが指した▲7九金(!)が絶妙手で、以下△同金▲8五歩で息を吹き返し、見事に棋王位を防衛しました。

将棋特有の専門用語は多いため、将棋を始めたばかりの方、あるいは観戦専門のファンの方は重宝すると思います。また、戦法・囲いを盤面図で示したり、実戦で役立つ格言の章が用意されていたりと、初心者の方には多少なりとも棋力アップの一助にもなるでしょう。

ただし、肝心の「羽生の眼」の文章が短すぎるのが残念です。名棋士を紹介する章で登場する「米長邦雄」を例に挙げると、本文で主なタイトル獲得・受賞歴などが14行掲載されているのですが、「羽生の眼」の文章は『エネルギッシュな人。将棋は、混沌とした複雑でわからないものを求める力戦型の棋風。』だけです(笑)。平均して4〜5行という感じで、期待しすぎているとガッカリするかも。

僕らが将棋を覚えた頃と違って現在はインターネットがあります。わからない用語はウェブ百科事典ともいえるWikipediaで調べたほうが、雑学的な要素を交えて解説されているケースも多く、より楽しめるのではないでしょうか。