所司和晴:横歩取りガイドU

2冊合わせて読めば大抵の変化は大丈夫
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評価:B
対象者:5級〜五段
発売日:1990年9月

横歩取りガイド」の出版から2年弱の間に登場した新手や新定跡を中心に掲載したシリーズ続編です。最も大きな変化は前巻では最終章「その他の横歩取り」の中の一戦法として12ページしか掲載されていなかった「△3三桂戦法」が一気に三倍増の36ページになり単独で第3章に割り当てられたことです。

これは△4五角戦法などに比べる派手さはないものの、「相ヒネリ飛車」模様から後手が左金を攻めに繰り出す戦い方などが定跡化された結果、プロの公式戦でも△3三角戦法に次いで指されるようになったためです。

全212ページの6章構成で、見開きに盤面図が4枚配置されています。目次は以下の通りです。

  • 第1章 相横歩取り
  • 第2章 △3三角戦法
  • 第3章 △3三桂戦法
  • 第4章 △4五角戦法
  • 第5章 △2三歩型
  • 第6章 △5五歩型(中飛車)
本筋は△8二角とされているが・・・

第1章 相横歩取り:図は△7三角まで
前巻では▲4六角には△8二角が本筋の一手として、△7三角については「▲同角成△同桂▲5五角△6五桂▲6六銀」と相手の攻めを逆用して先手有利として、検討を打ち切っていました。

本書では上記の▲6六銀以下、△2八歩▲同銀△2七歩▲3九銀△9五角(▲7三角成を消す意味)▲4八玉△5七桂成▲同玉△6九飛…の変化を紹介しています。結果はやはり先手良し。

この変化は2005年に出版された「郷田真隆の指して楽しい横歩取り」でも登場しており、そちらでは上記の△2七歩に代えて△2五飛、また遡って△2八歩に代えて△8八歩以下の手順も掲載しています。

本書では新手として△8二角や△7三角ではなく「△8六歩」を後手の桂馬を捌かせやすくする有力手段として紹介しており、それに対する先手の対策が研究がなされています。

さらに近年では△8二角などに代えてぼんやりと「△6四歩」とする手が一部のアマトップやプロの公式戦でも登場しています。この△6四歩をめぐる攻防については「定跡外伝 Vol.2(P211)」や「羽生善治の戦いの絶対感覚(P87)」で結論が出されていますので、気になる方はチェックしてみてください。

△8五飛戦法はもちろん掲載されていませんが、シリーズ前巻と合わせて読めば、横歩取りに登場する大抵の変化には対応できます。最新の手順について不安な方は深浦王位の「これが最前線だ!−最新定跡完全ガイド」や「横歩取り道場」の両シリーズで補ってやればよいでしょう。