佐藤康光:康光流現代矢倉 Vol.1 先手3七銀戦法

加藤流として知られる同戦法の基本を解説
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評価:C
対象者:5級〜三段
発売日:1997年4月

八段時代の佐藤康光棋聖がご自身の実戦(20局)を元に、現代矢倉の主流である▲3七銀戦法の定跡(+α)を解説していきます。

目次と巻末に対戦相手と棋譜がそれぞれ掲載されていますが、講座の中では棋戦名はおろか、対局者の名前も書いてないので、ちょっと読んだだけでは実戦とは気がつかないでしょう。

全223ページの4章構成で、見開きに盤面図が4枚配置されています。巻頭に全変化手順を示したチャート図が掲載されていますが、盤面図がありませんのであまり役に立ちませんでした。

第1章 △9五歩型(3局)
第2章 ▲2六歩-1六歩型(5局)
第3章 △8五歩▲4六銀型(8局)
第4章 ▲3七銀△8五歩型(4局)

第7期竜王戦 第6局 ▲羽生△佐藤より:図は▲5八飛まで
▲5五歩の仕掛けを拒否するなら△6四銀ですが、佐藤棋聖の選んだ手は△9四歩。以下、▲5五歩に△6四歩と銀の逃げ場を予め確保したのが佐藤新手で、▲5四歩△同銀▲9六歩と進みました。

上図では△9四歩に代えて、△2二玉として、以下▲5五歩△同歩▲同銀△5二飛▲4六銀△3五歩▲5五歩△3六歩▲2五桂△3一金(!)▲3八飛△3二飛とする「深浦流」も有力です。

同じく日本将棋連盟から刊行された「羽生の頭脳 5巻 最強矢倉・後手急戦と3七銀戦法」とほぼ同じ内容かなと思いきや、全然違っていました。

「羽生の頭脳」では、結論を先に出しておいて、その後に狙い筋と定跡の基本部分だけを明快に解説する初級者〜中級者向けの内容でしたが、本書では佐藤棋聖の実戦をそのまま講座にしているので、相手(当然プロ棋士)もベストの手で応じてきます。その分、仕掛けた後の手の応酬とその解説が高度で、中級〜有段者向けの内容と言えます。

解説の部分はその局面での考え方などについてはあまり触れられておらず、変化手順の説明で一杯一杯で、()←カッコが多くて疲れました。

講座というより、どちらかというと中盤で終了となる「自戦記」に近い感じで、正直微妙な一冊です。▲3七銀戦法を勉強するなら、対象棋力は同じでも断然読みやすい「現代矢倉の思想」がオススメです。

次巻の「康光流現代矢倉 Vol.2 森下システム」では、攻めと守りのバランスが重視される森下システムを見ていきます。