中田功:コーヤン流三間飛車の極意 急戦編

スペシャリストならではの一手が随所に登場します
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評価:A
対象者:5級〜三段
発売日:2003年3月

四間飛車人気に押されて(?)か、三間飛車をテーマにした専門書は長い間出てませんでしたが、最近では結構なペースで刊行されるまでになりました。

その先駆けとなったのが、現代棋界において同戦法の第一人者である中田功六段著の『コーヤン流三間飛車の極意』シリーズです。本書はその急戦編。

222ページ、見開きに局面図が4枚の全六章構成です。

第一章 コーヤン流三間飛車の駒組と特徴
第二章 居飛車超急戦の戦い方
第三章 居飛車急戦の攻防
第四章 居飛車▲3五歩急戦策
第五章 居飛車斜め棒銀
第六章 コーヤン流実戦 (対大野・真田・屋敷の計三局を初手から自戦記形式)

A図 第二章より 図は△5六歩まで

B図 第三章より 図は▲1五桂まで

流石、この戦法の第一人者である中田功六段の著書だけあって、定跡はもちろんのこと、経験がなせる手もいくつか解説されていて参考になります。

具体的に言えば、終盤で飛車なりを急がずに、じっと△6五銀と打って自玉の上部を安全にしつつ、△7六銀→△7五桂馬の攻めも視野に入れる手順や、超急戦の変化で銀による飛車取りを放置して、△7二銀と美濃囲いを完成させる手・・・etc

定跡に関しては、B図以降の変化に力が入れられています。このあたりの手順は昔の棋書では詳しく掲載されていないので貴重だと思います。

ちなみに、手番は三間側が全て後手となっています(除・六章)。後手三間は急戦に対して、やや分が悪いと言われてきましたが、本書の後書きで著者が「結論として後手三間飛車は居飛車急戦に十分対抗できると思っております。」と記しているように、互角には渡り合っていけるでしょう。

C図 ▲4六銀まで

不満点は特にありませんが、上のC図から△5六歩と指す変化が掲載されていません。(本書はコーヤン流の△5四銀をチョイス)。そちらの方は、「三間飛車道場(第3巻)急戦」、「定跡外伝」をお持ちの方は第二章を参考にされればよいと思います。

対急戦の基本定跡から中終盤の指し方のコツまでわかりやすく解説されているので、これから三間飛車を始めたいと思っている方・既に三間飛車のヘビーユーザー(?)の方、共に満足できる一冊でしょう。

なお本巻の姉妹編として「コーヤン流三間飛車の極意 持久戦編」・「実戦編」があります。

ネット将棋道場の24で観戦する限りでは、対三間飛車には居飛車穴熊の採用率の方が高いと感じるので、頻出度でいくと持久戦編>急戦編でしょうか。