日浦市郎:投了の真相 Part2―実戦 詰みの急所

前巻よりも易しい問題が増えました
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評価:B
対象者:3級〜プロ棋士
発売日:1997年12月

息詰まる終盤戦で登場した「これがプロの実力か!!」と唸ってしまうような華麗な詰み筋をまとめた「投了の真相―プロの実戦即詰み100題」の続編となります。

前巻は難易度が高すぎたため、一部の高段者の方を除いては「プロの技を鑑賞する」ための読み物の感じが強くなっていましたが、本書ではプロの実戦でも3〜7手詰みなど手数の短い詰め将棋も登場しているため、取っ付きやすくなっています。

全222ページの3章構成で、123問を掲載(前巻に比べて2割増し)しています。
第1章の短手数の問題は1ページあたり2題が、ほかの章は1ページあたり1題の出題形式になっています。目次は以下の通りです。

  • 第1章 直感トレーニング編 ひと目で詰ませる勘を鍛える(34問)
  • 第2章 必須手筋編 基本を知れば詰みが見えてくる(60問)
  • 第3章 読みきりトレーニング編 仕上げは超手数の読みきりに挑戦(29問)
銀を捨てて入玉を阻止する

第1章 第2問 95年王将戦 ▲羽生−△郷田より:図は△5四玉まで
△4五玉→△3六玉の脱出ルートを許してはいけません。そのためには飛車の縦利きを通すことが肝心です。

正解は▲5五銀△同玉▲5六金△同玉▲4六飛成の5手詰みです。また▲5六金に代えて▲4六角△5四玉▲5五歩△5三玉▲3五角でも詰みとなります。

上部脱出を阻止します

第2章 第41問 96年全日プロ ▲村山−△三浦 より:図は△2三同金まで
これは比較的簡単だと思います。正解は▲3一銀△1三玉▲2二銀△1二玉▲1一銀成△同玉▲1二香△同玉▲2三金△同角▲1一飛△同玉▲2二金までの13手詰めです。

米長永世棋聖は村山九段には強かった

第三章 第105問 93年王将リーグ ▲米長−△村山 より:図は△5七角成まで
難関レベルの問題です。これは当時の「将棋世界」で連載されていた河口六段の「対局日誌」でも取り上げていたので、ハッキリと覚えています。飛車の横利きがあるため、後手玉は詰みそうにありませんが…

正解は▲4一飛成(!)△同玉▲5二銀△同飛▲同と△3一玉▲4二金△同金▲同と△同玉▲4三歩△同玉▲5五桂△3三玉▲5三飛△2四玉▲1五金△同玉▲1六歩△2五玉▲2六金△2四玉▲1五金までの23手詰みです。

第1章は短手数の詰め将棋だけを34問揃えていますので、手軽にプロのテクニックを堪能できるうえに、上級〜初段前後のレベルの方なら終盤力のトレーニングにもなります。

第2章は「必須手筋編」となっており、「一間龍」や「退路封鎖の捨て駒」などの詰め将棋の基本手筋を身に付けていれば解ける問題…とのことですが、本書ではその基本手筋をパターン化して解説していませんし、基本手筋が全く登場しない問題もあるなど、イマイチまとめ切れていないのが残念です。

ただし、有段者クラスならば問題の半分くらいは四苦八苦しながらも詰ますことができるレベルですので、通常の詰め将棋本の綺麗な形に慣れている方は実戦型の問題として腕試しにピッタリでしょう。

第3章は前巻と同じくプロ級レベルの問題が登場していますので、完全に高段者以上の方が対象となっています。ただし、最終章は29問だけですので、全体的に見れば前巻に比べて難易度は低くなっており、より幅広い棋力の方の終盤力の養成に、あるいは純粋な読み物として楽しめる一冊になっていると思います。

なお「投了の真相」というタイトルから「ポカ」や「一手バッタリ」、「反則」等のハプニング&エピソードを期待した方もいらっしゃるかと思いますが、そのジャンルの本ならば「天使の助言・悪魔のささやき〜将棋好プレー・珍プレー集」がオススメです。