天使の助言・悪魔のささやき〜将棋好プレー・珍プレー集

トッププロ棋士でもうっかりミスはあります
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評価:A
対象者:将棋ファン全般
発売日:1998年9月

プロの実戦で現れた『絶妙手』・『超大ポカ』・『反則』等のハプニング全53題を観戦記者の鈴木宏彦氏が局面図の解説、対局者のエピソードを織り交ぜて紹介したユニークな一冊です。

石田和雄九段が王手を放置して(笑)、相手の加藤一二三九段の玉に王手を掛け返すという凄い一局から本書は始まります。

これはありえない

第11期竜王戦 ランキング2組 ▲石田△加藤より:図は△1七金まで
図は△1七金と加藤九段が指したところですが、石田九段はここで王手放置で相手玉に王手(▲2二馬)を掛け反則負け!!!!!(笑)。

なんでも、王手に対して逃げたものと思い込んで、次に指す予定の手を指してしまったとか。『なんてことを。バカ、バカ。勝ちなんですよ。必勝でしょう。読みきってたんだ。それなのに・・・』と扇子で頭を叩いている石田節もしっかり紹介されています。(数ページ後に再び石田九段が登場)

この将棋は雑誌「将棋世界」の1998年5月号でも、弟子の勝又六段に紹介されてますのでお持ちの方はご確認ください。

また佐藤康光棋聖の『自分の見落としに気付き、あまりのショックと恥ずかしさのあまりに相手の顔を見る事が出来ずに、頼んだ食事をほっぱらかして連盟近くの体育館の周りを一時間うろついていた』という話、中田功六段の『十年に一度の手』にまつわる後日談、屋敷九段の『勉強は一日1分』、加藤一二三九段の『あと何分ですか〜?を10秒で5回(!)』等、局面紹介後のエピソードが読者を飽きさせない内容になっています。

単にポカや好手を紹介するだけでなく、そこに至るまでの読み・心理状態・周りのプロの反応・後日談をバランスよくまとめている鈴木宏彦氏の筆力がお見事です。

前書きにある『プロ棋士が見せる好プレーには思い切り感動する。プロ棋士が珍プレーを見せたときにはその裏に隠れた状況を考えてみる』という氏の考え方を見事に具現化した好著だと思います。

この本を読めば、プロへの親近感が非常に沸いてくること間違いなし(笑)。

ちなみに表紙のモデルは谷川、羽生、森内、佐藤(康)、神吉、真田、先崎、屋敷、高橋、森下さんです。