青野照市:精選必至200問 実戦的な傑作問題集

1・3手の良問を200題収録
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評価:A
対象者:10級〜二段
発売日:2010年2月

「鷺宮定跡」でお馴染みの理論家・青野照市九段による1・3手限定の必至問題集です。「寄せの手筋168」をはじめ、必至本の名著は軒並み絶版となっており、困っている方も多かったと思いますが、久々に新刊でいい本が出たという感じです。

208ページに全200題(1手・3手問題が100問ずつ)が収録されています。
問題は1ページあたり2題が出題されており、問題図の下には簡単なヒントと解答の正誤を記入するための復習用チェック欄も用意されています。

1ページあたり2題という構成の関係上、解説ページには失敗図や参考図はなく正解図が1枚と簡潔な説明があるだけですが、1・3手と短い必至だけをテーマにした本ですので、これで十分でしょう。

ただ捨てが見えるかどうかがポイント

1手必至より 第59問より:後手の持ち駒は残り全部
ここでは▲1二銀が、次の▲1三銀と▲2一龍を狙った正解手となります。対して@△同香は▲1一銀ですし、A△同玉も▲1三銀でいずれも一手詰みとなります。

この問題は先日レビューした金子タカシさんの名著「詰みより必死 終盤の超発想法」のページで掲載している最初の問題図とほぼ同じですよね。

持ち駒なしでも寄りとなります

3手必至より 第139問より:後手の持ち駒は残り全部
▲3二龍で次の「開き王手」を狙うのは△2三銀で受けられてしまいますし、▲4四角成も△3三歩で後続手がありません。

ここでは▲1一角成△同玉▲2三香の手順が正解となります。後手玉は次の▲2一龍と▲2二香成の詰めろを同時に受ける術がありません。

危険地帯に玉を呼び寄せる

3手必至より 第145問より:後手の持ち駒は残り全部
▲2三角は△4二玉▲4一飛△5三玉で大海に逃げられてしまいます。玉を左辺に行かせない手を最優先に考えると正解が自ずと見えてきます。

正解は▲2二飛△同玉▲4一角です。▲2二飛に玉が逃げるようでは一手詰めです。したがって△同玉の一手ですが、飛車を犠牲にすることで後手玉を危険地帯に引っ張り込むことに成功しました。

続いての▲4一角が、攻めの拠点である2四の歩とコンビをなす絶好の一打となります。後手は仮に△3二金(銀・角)や△3一桂と受けても、▲2三金以下、簡単な詰みです。先手は2三の地点に駒を3枚利かすことができるのに対し、後手は2枚まで利かすことができません。「数の優位」による代表的な必至パターンです。

200問のボリュームで1000円という価格はかなりのお得感があります。必至を初めて勉強する初級者の方はもちろん、問題をガンガン解いて、何となく頭に入っている基本パターンを完全に体に覚えこませたい中〜上級者の方にもオススメです。

ただし、上図の1問目の例(金子本との比較)のように、1手必至に関しては、狙いを実現するための駒の配置パターンが完全に出尽くしている感がありますので、類書を2〜3冊お持ちの方は、前半の100問は新鮮味があまり無いと思います。

一方、後半の3手必至(100問)は類似形を見たことのない問題も多く、9〜11手詰みの変化を読みきる必要がある問題も登場するため、有段者でも楽しめる内容となっています。

終盤は居飛車・振り飛車の戦型に関係なく必ず訪れます。「必至」は「詰め将棋」や「囲い崩し」と共に終盤における大事な要素です。本書を読めば、その基礎力を習得することができます。5・7手の問題を収録した続編も是非出版してほしいですね。