金子タカシ:詰みより必死 終盤の超発想法

そろそろ続編を期待
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評価:S
対象者:10級〜四段
発売日:1996年4月

本書は「寄せの手筋168」、「ザ必死! 新・終盤の定跡」に続く金子タカシさんによる必死専門書の第三弾です。

冒頭で「必死=詰めろをどう受けても即詰みを逃れられない状態」の意味とルールを簡単に説明した後、部分図を使って主な必死のパターン(両王手含み・受けるスペースがない・同時に複数個所の詰めろをかける…など)を分類してから、実際に問題を解くという流れも前巻と同じです。

2003年に同タイトルでMYCOM将棋文庫として復刊されながらも絶版になり、オークションやアマゾンのマーケットプレイス(古本市場)での価格が高騰している点も全く同じです(笑)。目次は以下の通りです。

  • まえがき
  • 必死のルールと決まり型の分類
  • 第1章 1手・3手の必死(第1〜48問)
  • 第2章 5手・7手の必死(第49〜82問)
  • 第3章 9手以上の必死(第83〜100問)

問題数(全100問)は同じですが、前巻と比べると一番簡単な1手・3手の必死、難易度が高い9手以上の必死問題数が若干増えています。また、プロの公式戦で登場した「必死」を巡る攻防を題材としたコラムが7本掲載されています。

実戦でいつ現れもおかしくなさそうな局面

第1章 1手・3手の必死 第9問より
金と馬の守備力が強力ですので、ここは別の筋に狙いをつけたいところ・・・
ここでは香頭に打つ▲9二角が正解で、これで一手必死となります。次の▲9三銀と▲8一龍の2つの詰めろが狙いですが、対して@△同香は▲9一銀、A同玉は▲9三銀で詰みですので、後手はこの角を外せずに受けなしとなります。

龍の無力化がキーワード

第1章 1手・3手の必死 第33問より
8筋に居座る強力な龍をどうやって無力化するかがポイントです。
正解は▲9三銀△同玉▲7一角の3手必死です。▲7一角が龍と玉を動けなくする一手で、対して@△同龍は8筋の力関係がマイナス1となりますので▲8三金打の3手詰み。A△9二玉は▲8三歩成△同歩▲9三金で詰み。B△9二金(銀)も▲8三金打以下詰みです。

Bのケースでは角のラインに玉が入っているので、▲8三の地点で清算するときに△同歩と出来ない点に注目。大駒のラインに玉を無理やり引きずり込むのは、応用の利く必死手筋です。

後手も打ち歩詰め誘導で抵抗しますが・・・

第2章 5手・7手の必死 第52問より
「玉は下段に落とせ」と初手▲9二飛成の鬼手から始まり、以下△同玉▲8二銀△9五角▲9四歩までの5手必死です。

三手目の▲8二銀は次に▲9三歩△同角▲9一銀成の詰みを狙ったものですが、後手も△9五角と「打ち歩詰め」誘導の高等テクニックで抵抗します。しかし、今度は直接手ではなく▲9四歩と垂らせば、見事に受けなしとなります。

最後は例の形になります

第2章 5手・7手の必死 第59問より
必死問題頻出の「あの形」を描けたら簡単だと思います。
正解は▲2四桂△同銀▲2二金△同玉▲3二銀の5手必死です。初手▲2四桂に△同歩は▲2三金の一手詰めですので、△同銀となりますが、▲2二金△同玉と危険地帯に玉を呼び込んで▲3二銀とすれば、どの必死本でも登場する「腹銀」の典型例になってジ・エンドです。

問題図は相変わらずコンパクトなため「解いてやろうか」という気持ちにさせられます。これまでの2冊に満足された方なら、本書も楽しみながら繰り返し解くことができるので、棋力向上に大いに役立つことでしょう。

いずれも絶版ということもあり、「3冊揃えましょう!」とは気安く言えませんが、どれか1冊はお手元に置いて欲しいと思います。