清水市代:囲いのエッセンス

タイトル獲得多数も未だ旦那の獲得ならず(笑)
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評価:B
対象者:15級〜5級
発売日:1994年3月

年齢を重ねるごとに、その文体がどんどん女子高生化している(最近の顔文字連発は一瞬引きました)清水女流による「囲い」の入門書です。

『ブーッ(不正解の音)。それでは、激しい終盤戦を乗り切ることは出来ません。』、『ちょっぴり薄くなった穴熊くん。とは言っても、うっかり手を出すとパックリ、くいつかれてしまいます。』など、子供向けの文章で書かれていますが、本人は子供向けとは思っていないと思います(笑)。

全205ページの4章構成で、見開きに盤面図が4枚配置されています。

第1章 囲いの種類…まずは形を覚えましょう
第2章 正しい囲いの使い方…使用上の注意を覚えましょう
第3章 急所を覚えよう…弱点を知らなきゃたおせない
第4章 実戦編…応用力を身につけよう

対舟囲いの寄せです

第3章 急所を覚えよう 舟囲いPart.5より
▲5二銀では、△3一金と寄られてしまい重い攻めになってしまいます。ここは、▲2四桂が急所の一着です。△同歩に▲4一龍が決め手で、△同玉の一手に▲2三銀が角取り+▲3二金の詰めろとなります。

後手としては両方の狙いを防ぐ△3二飛が精一杯の抵抗ですが、▲5二金△3一玉▲6三馬で必至となります。

『自分にとって、大切なもの。皆さんは、どうしています。思い出なら、心の奥に。宝物なら引き出しの奥に。誰にも触れさせないように、ちゃんとしまっておくでしょう? 将棋も、同じなんです。』と実にわかりやすい例えで、囲いの重要性を説いてから講座がスタートします。

第1章では、玉を囲ったことのない超初心者を対象に囲いの種類とその長所・短所を簡潔に紹介しています。どのくらい簡潔かというと、美濃囲いの盤面図の下に通常の棋書の文字の3倍くらいの大きな文字で『これは美濃囲いです。そう言うんです。』で1ページが終了(笑)。『そう言うんです。』という有無を言わせぬ括り方が凄いですね。

第2章では、戦型に合わせた正しい囲いのチョイスと駄目な例(対矢倉に舟囲いとか)を解説しています。どんなに優秀な囲いでも、相手の戦型を見極めてから駒組しないと駄目ですよというわけです。

第3章からは内容が少し本格的になり、相手の囲いの急所とその崩し方を見ていきます。先に手順をズラッと並べるのではなく、『喜び勇んで▲7四桂と打ちたいところ。だけど、△7一玉と逃げられてみると、あら?二の矢がつげない。それでは困ります。もう一度よく読んでみましょう。』などのヒントが出された後に、正解手順が解説されます。

ただし、この章は正解手順の解説が清水女流のメルヘン文章のなかに紛れ込んでいますので、復習の際にパッと答えがわからないところが難点です。(正解が1手で完了する場合だと、次のページの図面を見れば答えがわかります。)

対象となる囲いは美濃囲い、左美濃、舟囲い、穴熊、矢倉です。紹介されている手筋はどれも必修のものばかりですので、既にほかの囲い崩しの本をお持ちの方にはお馴染みの盤面図がほとんどでしょう。

内容は至ってオーソドックスで囲い方やその崩し方の入門書としては最適といえますが、清水女流の文体が気になる方は、「NHK将棋講座」の内容を単行本化した「佐藤康光の寄せの急所・囲いの急所」がオススメです。

また、清水女流が講師を務めた「NHK将棋講座」の内容を単行本化した「清水市代の将棋トレーニング」もレビュー済みですので、そちらも参考にしてみてください。