谷川浩司:谷川流光速の決め手

創作次の一手が多いのが残念
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評価:C
対象者:5級〜四段
発売日:1997年1月

勝敗を分ける「中・終盤の決めどころ」をテーマにした次の一手形式の問題集です。全体の2/3が谷川九段の創作問題で構成されており、終盤のエッセンスを勉強するというよりは、エンターテイメント色が強い一冊となっています。

第1章 創作次の一手(56問)
第2章 実戦次の一手(40問)
第3章 創作詰将棋(20問)

△1九飛車を逆用します

第1章 創作次の一手より:図は△1九飛まで
両飛車取りを狙って▲4六角打とするのは、△同歩▲同角に冷静に△5五角と合わされると後続手がありません。ここでは▲9三角成と成り捨てるのが気付きにくい好手となります。

△同桂は▲7三角の王手飛車取り、△同香は▲9一角と打ち、△7三角なら▲8二角成△同角▲5二飛車で先手優勢となります。

タイトル戦からの出題です

第2章 実戦次の一手より 第32期王位戦 ▲谷川△中田(宏):図は△3七角まで
「両取り逃げるべからず」とばかりに、▲6一銀とするのは△5一飛▲6二角成△2八角成▲5一馬に△4六馬と好所に引かれて後手玉を寄せるのは大変です。

正解は▲3五金(!)△同金と取らせてから▲6一銀と打つ順です。これによって後手は△3四金と△4六馬の二手が必要となってきますので、先手優勢となります。

次の一手問題には「★★★★」のように難易度を表すマークが付いていますが、出題される順番は難易度順に分けられていません。また、駒・囲い・戦型別などによるカテゴライズもなく、ただ漫然と問題を掲載しているだけです。

さらに、光速の寄せを堪能できるはずの第2章(実戦編)の解説も非常に短く(1ページの半分)、手順を追うことに終始しているのが残念。その局面以外でも応用できる「共通の考え方」などを谷川九段が解説してくれていたら随分勉強になったと思うのですが…。

セールス分には『光速流の核心に触れる中・終盤の捉え方や考え方を「次の一手」形式で纏めた。』とありますが、中・終盤の捉え方や考え方はほとんど載っていないので要注意です。

どちらかというと、あまり悩まずに解答ページを見て「お、こんな手もあるんだ」という感じで気軽に読んでいくタイプの本ですね。正直、あまりオススメできません。

谷川九段の著書でその華麗な寄せを勉強したい方には、囲い別の攻略法をまとめた「光速の寄せ」や「谷川流寄せの法則」、終盤における読みを披露した最難関レベルの棋書「光速の終盤術」が良いでしょう(似たようなタイトルが多すぎ^^;)。