谷川vs羽生100番勝負―最高峰の激闘譜!

永遠のライバル対決の軌跡がこの一冊に!
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評価:A
対象者:将棋ファン全般
発売日:2000年9月

羽生さんが小学生名人になった対局の収録(NHK)で解説をつとめていたのが谷川名人(当時)だったという、まさに運命的な二人の出会い。その後も数々のタイトル戦で激闘を繰り広げ、なかでも羽生さんの七冠達成を阻止し、翌年再び七冠達成か阻止かの大一番を戦った1995〜1996年の将棋界の熱狂ぶりは今でも忘れられません。

本書は、1986年10月の早指し戦での初手合いから2000年7月31日の棋聖戦第5局までの熱闘譜100番を、解説付きの全棋譜とお二人が選んだベスト局の自戦記、関係者がみる羽生・谷川像を交えて振り返っていく永久保存盤的な一冊です。

全311ページ、巻末には年度別対戦成績などの各記録も収録されています。目次は以下の通りです。

谷川、羽生ベスト局
谷川、羽生二大天才頂点の戦い
谷川vs羽生大分析(序盤:高橋道雄、中盤:島朗、終盤:真部一男)
谷川vs羽生全棋譜
激闘の記録

ここから光速流の決め手が炸裂!

第62期棋聖戦第1局より(▲羽生 △谷川):図は▲4八飛まで
有名な局面なのでおぼえておられるファンの方も多いと思いますが、ここで△4七角の中合いが谷川光速流の名に恥じない決め手。対して▲7八飛と銀を外すのは△同飛成で詰むので、▲4七同飛ですが、以下△5一玉で詰みません。この局面に至る前にも相当にきわどい変化手順があったのですが、そこでも谷川棋聖(当時)に中合いの歩があるために、打ち歩詰めで逃れるというまさに指折りの好局でした。

谷川九段の選んだベスト局は羽生王座の七冠達成を阻止した第44期王将戦第7局(千日手指し直し局)です。
『どう見ても不利なこの勝負で勝てたのは、やはり阪神大震災が大きく影響したと考える。七冠達成となればこれは社会的話題だし、羽生さんが全ての人に祝福される形でなければならない。だがそれが、被災した私から最後のタイトルを取っていった、となると羽生さんが悪者になりかねない。(中略)逆に言えば、その後羽生さんが6つのタイトルを防衛して、王将の挑戦者になった時点で、七冠達成は約束されていた。』とは谷川九段のコメントです。

また、素人には羽生さんがいなければ谷川さんもタイトルをもっと多く獲得できていたと思ってしまうのですが、『羽生さんと戦うことが出来て、自分の将棋のレベルも上がりました。感謝しています。』(これは本書には掲載されていません)と、どこまでも謙虚な谷川九段の姿勢が実に素晴らしい。

棋譜の解説は1局につき2つの盤面図が掲載されています。また、次のページに「勝負のポイント」と題して、最重要局面での指し手解説がありますので、ある程度の棋力があれば二人の名勝負を堪能することができます。

日本将棋連盟からは本書の姉妹編とも言える「羽生VS佐藤全局集:100局を超えたトップ対決のすべて」も後年出版されましたので、ファンの方はそちらのページも参考にしてみてください。