羽生VS佐藤全局集:100局を超えたトップ対決のすべて

将棋ファンにはたまらない永久保存盤的な一冊です
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評価:A
対象者:将棋ファン全般
発売日:2006年9月

現代将棋界の頂点で激闘を繰り広げている羽生善治と佐藤康光の両氏。二人の対局は120局を超え、同一カードとしては最多記録となる米長-中原の187局を超えるのは時間の問題だと思います。本書では、昭和63年の公式戦初対局から平成18年の第55期王将戦まで、17年半にわたる対戦を棋譜解説と自戦記、インタビューで振り返ります。

構成は先に出版された「谷川vs羽生100番勝負―最高峰の激闘譜!」とほぼ同じになっています。

羽生VS佐藤ベストワンの一局(両者によるセレクションを自戦記形式)
羽生VS佐藤核心インタビュー(両者のほか、島朗、田中魁秀にインタビュー)
新しい将棋の創造(谷川九段の寄稿)
羽生・佐藤、強さの秘密(解説・阿部隆、井上慶太)
羽生VS佐藤全棋譜解説

第27期棋王戦第3局より(▲佐藤 △羽生):図は▲3八歩まで
ここで△3八同飛成なら、いったん▲5九金(!)△同金と手を稼ぐ捨て金を放っておいてから▲1六角が狙い。以下△2九龍▲6一角成△同銀▲3二飛△6二金▲5一とで▲一手勝ち。この狙いを看破した羽生棋王(当時)は図から△6八金▲同金△2九飛成としました。

全棋譜解説の項目では、消費時間の経過が付された棋譜を2〜3枚の途中図と簡単な手順解説を挿入してあります。さらに『勝負のポイント』と題して、左側のページにその対局の勝敗を分けることとなった局面を図面入りで詳しく解説しています。

また、カラーページやインタビュー、他の棋士から見た羽生・佐藤像、また両対局者の写真も多く掲載されていますので(「将棋世界」誌で使われていたものです)、普段は棋譜並べをしないライトなファンの方でも十分に楽しめます。

羽生『昔の佐藤さんと指していると、将棋の神様と指しているんじゃないかと思うことがよくあった。盤上の最善手を追及するあまり、僕の姿が目に入っていないじゃないかという感じ(笑)』など、普段は聞けない話も出てきます。

似たような本がたくさん出ている定跡本と違い、全局集というのは何回も出版できないので、構成が大変だったと思いますが、初心者から高段者までが読める非常に充実した内容になっております。

長年にわたって(そしてこれからも)、この二人の将棋を見ていられるのは、僕ら将棋ファンにとって、この上なく贅沢なことなんですよね。