所司和晴:横歩取りガイド

一触即発の手順が満載
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評価:B
対象者:5級〜五段
発売日:1988年7月

一局の将棋を勝ちきるには「手を読む力」だけでなく定跡に関する「知識」も必要とされますが、数にある将棋の戦法の中でも最も「知識」が問われるのは間違いなく「横歩取り」でしょう。

序盤から一触即発の手順が至る所に潜んでおり、中盤は飛ばして一気に終盤!そんなスリリングな戦いに臨むにあたって頼もしいガイド役になるのが横歩取りの定跡を網羅した本書です。著者は「定跡伝道師」の異名を取る所司七段。

今でこそ「東大将棋ブックス(四間飛車道場シリーズなど)」をはじめとして、現役の奨励会の会員やプロ棋士も参考にする棋書も出てきましたが、1988年に本書が出たときは「こんな手順まで載せて大丈夫なのか?」と多くの居飛車党の棋士が驚いたそうです。

本書は「四間飛車ガイド」「中飛車ガイド」「穴熊ガイド」などの「定跡百科シリーズ」です。このシリーズは形成判断がひと目でわかるように結果図や参考図の下に「±(先手優勢)」「=(互角)」などの記号を掲載しているほか、指し手にも「!(好手)」「?(疑問手)」などの記号を加えるなど様々な工夫がしてあるため、高度な内容でもわかりやすいのが特徴です。

全212ページの5章構成で、見開きに盤面図が4枚配置されています。目次は以下の通りです。

  • 第1章 △2三歩型
  • 第2章 △4五角戦法
  • 第3章 相横歩取り
  • 第4章 △3三角戦法
  • その他の横歩取り △3三桂戦法…ほか
△6六銀は若手時代の谷川九段が指している

第2章 △4五角戦法より:図は▲3六香まで
開始わずか二十手で放たれる△4五角でのっぴきりならない局面に突入する「△4五角戦法」。上図の△3三桂に代えて△8七銀(!)などの奇手もあり、激しい戦いに目がない方にはピッタリの戦法でしょう。

上図は先手が最善とされている▲3六香を放ったところです。ここでの後手の候補手は@△6六銀(!)、A△3六同角▲同歩△5四香(!)、B△8七銀(!)と凄い手ばかりです。

本書では横歩取りの中では比較的ゆったりとした流れになりやすい△3三角戦法と△3三桂戦法を除いては、詰みの有無に関わるところまで深く掘り下げて研究していきます。

出版から20年が経ち当然絶版となっていますが、リンク先のアマゾンではマーケットプレイス(=古本)で100円前後で入手することができます。定跡の進歩で現在では覆された新手などもありますが、「東大将棋ブックス 横歩取り道場」も入手しにくくなった現在、有段者クラスの入門書としてまだまだ本書を読む価値はあるでしょう。

なお、シリーズ続編として本書の出版後に登場した新手や最新の流行形となった「横歩取り△3三桂戦法」の解説ページを拡充した「横歩取りガイドU」も出版されていますので、そちらも参考にしてみてください。