大内延介:中飛車ガイド 定跡百科 Vol.5

▲38飛や▲4六金戦法など最近は滅多に見ない戦法を解説
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評価:C
対象者:5級〜三段
発売日:1988年11月

同じMYCOMから近年シリーズ化された「東大将棋ブックス」の前身ともいえる「定跡百科(イエローブックス)」の第5弾となります。本書では大内九段が中飛車の定跡を解説していきます。

本シリーズの特徴として、盤面図の横に「±(先手優勢)」、「=(互角)」のように形勢判断が一目でわかるように記号が掲載されています。これはチェスの世界では万国共通に使われているものです。

全212ページの7章構成で、見開きに盤面図が4枚配置されています。目次は以下の通りです。

第1章 ▲4五歩早仕掛け
第2章 ▲3八飛戦法
第3章 急戦中飛車
第4章 ▲4六金戦法
第5章 玉頭位取り
第6章 左美濃
第7章 その他の中飛車

第3章 急戦中飛車より:図は▲6五歩まで
▲3六歩〜4六歩〜4七銀〜4八金と風車戦法の陣を敷いても先手としては十分ですが、意表をついて▲6五歩といきなり仕掛けるのも有力な仕掛けです。以下△6五同歩▲5五歩△同歩▲同飛△7三桂▲5二飛成△同金▲2二角成△同玉▲4一角△5一金▲3二金△1二玉▲7四角成で先手勝勢です。

▲4五歩早仕掛けと▲4六金戦法以外は、各ページとも基本図に至るまでの手順は一切掲載されていません。そのためある程度その定跡の形に慣れてないといけませんが、紹介されている戦型(得に急戦)が非常に古いものばかりですので、基本図に至るまで少し頭を使うことになります。

第4章の中飛車に対する▲4六金戦法は僕がネット将棋(主に倶楽部24)をやり始めたこの四年間で1回しか見たことがないです。1988年に出版された本書の中でも既に「最近あまり見かけなくなった」と書いてあるくらいですから(笑)

「東大将棋ブックス」のように、変化を深く掘り下げていくのではなく、各候補手や分岐点をそれぞれ2ページずつ紹介してあるだけですので、カタログに近い感覚です。

第2章の▲3八飛戦法は「羽生の頭脳 第3巻 急戦、中飛車・三間飛車破り!」の方が詳しく、また解説も明快です。そちらは絶版になっていませんので、現在でも手に入ります。

そのほかのテーマとなる局面は頻出度が低いものばかりですので、「昔の中飛車をどうしても勉強したい」という方や棋書コレクター以外の方には必要のない一冊だと思います。

「横歩取りガイド」や「三間飛車ガイド」は現在でもよく目にする局面の変化手順が解説されていますが、本書は既に役目を終えたと言えるでしょう。

姉妹書として「中飛車マスター 定跡百科ワークブック Vol.5」も4年後に出版されており、本書で学んだ内容を次の一手形式で復習していくようになっています。