杉本昌隆:杉本流四間飛車 封殺!居飛車穴熊

イビアナ崩しのオリジナル戦法を解説
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評価:C
対象者:8級〜二段
発売日:1998年12月

本書は、対居飛車穴熊の画期的な戦法「藤井システム」の登場により、振り飛車を指すプロ棋士が再び増え始めた90年代後半に書かれた杉本七段によるイビアナ崩しの本です。あの窪田六段の著書も名を連ねていることでマニア間で有名な(笑)「振り飛車新世紀」シリーズの第6弾となります。

最初は、典型的な初期の藤井システムの狙い筋が解説されていますが、一旦、四間飛車に振っておいて、▲1七香車から▲1八飛と居飛車穴熊の端を狙う陽動居飛車、「目には目を」のハンムラビ法典ならぬ「穴熊には穴熊」の相穴熊も掲載されています。

このシリーズの特徴として、自戦記のページが多く、本書も90ページ近くが杉本七段の実戦譜となっています。この部分を減らして、定跡解説にまわしてほしいという方もいると思うので、好き嫌いが分かれるシリーズです。

全223ページの2部構成。見開きに局面図が4枚というオーソドックスな構成となっています。

第1部 定跡編
序章 穴熊とは 第1章 急戦穴熊封じ、陽動居飛車 第2章 相穴熊
第2部 実戦編
居玉急戦の会心譜 対福崎八段
自戒の一局    対佐藤八段
杉本流の振り飛車穴熊 対畠山(成)六段
相穴熊の熱戦譜 森内八段
最強の相手と戦う 対羽生四冠

藤井システム

第1章 急戦穴熊封じより:図は▲5六銀まで
藤井九段-高橋九段で現れた代表的な藤井システムの局面図です。以下△4五歩▲同桂△7七角成▲同桂△4四銀▲6四歩△8六歩▲7一角△8四飛▲6三歩成△8七歩成と激しい攻め合いとなります。

イビアナの弱点の端を狙います

第1章 陽動居飛車より:図は△3一金まで
とても四間飛車だったとは思えないが、これは▲4八飛を後手の居飛車穴熊を確認してから1筋に振りなおす陽動居飛車戦法。ここから矢倉の堅城を作り上げて、機を見て5筋の歩を交換して持ち歩にし、二段ロケットによる端攻めの際に利用します。

相穴熊

第2章 相穴熊より:図は△5五歩まで
先手は左銀を早めに繰り出し居飛車穴熊を牽制するのが常套手段です。本書では図から▲4七銀を解説していますが、▲4五銀の激しい手順も当然あります。その手順は「振り飛車新世紀」シリーズ第4弾の「鈴木大介:鈴木流四間穴熊」でピックアップされています。

出版から10年近く経った今となっては、特に注目すべき章もなく、定跡の変化手順も浅くしか解説されていないので、もはや役目を終えた本ともいえます。
第2章の相穴熊は現在でも振り穴党の必修科目ですので、一つ上のレベルを目指したい方は「四間飛車道場 第7巻 相穴熊」などで勉強するとよいでしょう。

また、対イビアナの新戦法として杉本七段は「杉本流端歩位取り穴熊」も著していますので、こちらも参考にどうぞ。

この「振り飛車新世紀」シリーズは次巻の「窪田流四間飛車2 撃退!右四間」で完結となっています。