杉本昌隆:杉本流端歩位取り穴熊

一段飛車と端攻めの組み合わせはは強烈です
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評価:B
対象者:2級〜三段
発売日:2004年4月

プロの平藤六段が公式戦で初めて指し、平成14年のA級順位戦 羽生−佐藤康光戦、翌月の王位戦第5局 谷川−羽生戦で一躍注目を浴びるようになった端歩位取り穴熊を、著者の自戦記(計5局)を含めて解説した一冊です。

後手番で△9四歩〜△9五歩と藤井システムの出だしで端の位を取り、相手が居飛車穴熊に組んできたら、こちらも堅さ負けしない穴熊に組み、穴熊攻略の急所である端攻めの権利を、自分だけが握ってしまおうとする実戦的なコンセプトが、この戦法の骨子となっています。


盤面図は便宜上、先後を入れ替えています。本書でも同様に後手番(振り飛車側)の視点から読み進めていきます。

ポイントとしては、@居飛車側が穴熊にする態度を明確に示してから、こちらも△9一玉と穴熊に潜る(振り飛車が我先にと穴熊にすると、居飛車側は銀冠から ▲9六歩△同歩▲同銀△同香▲同香△9三歩▲9八香△9二銀と2手かけた端の位を逆用されて、一気に振り飛車指しにくくなります)、A後手番で端歩に2手かけている分、振り飛車側が立ち遅れているように見えるが大丈夫(指し慣れないうちは違和感を感じますが、大捌きの後に一段飛車を降ろしてみると、桂馬取りから一段龍&△9六歩の端攻めの組み合わせがかなり強力なのが実感できます。端の位を主張して、中央での駆け引きは居飛車側に追随できればよし、の考え方でいいと思います)、の2点が挙げられています。

2004年4月発行と新しいので、最近多く見られる松尾流穴熊や美濃囲いから穴熊に組み替える「超持久戦」も解説されています。

振り飛車穴熊党というよりも、むしろ純粋な四間飛車党が戦法の幅を広げるのに役立つ一冊だと思います。