田中寅彦:将棋界の真相

加藤九段のエピソードは相変わらず面白い
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評価:B
対象者:将棋ファン全般
発売日:2004年11月

加藤一二三九段がマイストーブを対局室へ持ち込み、それを自分ではなく対戦相手に向けて(笑)対局をする話、駒をチョンチョンと触る時に対戦相手の神谷七段の駒までいじっていたら神谷七段がキレて(文中に「キレて」と本当に書いてある)、「僕の駒に触らないで」と言った為に二人の関係がギクシャクして、それ以降は二人の感想戦は行われないようになった、等の笑える小話から羽生善治王座・米長邦雄永世棋聖の人間像、棋士の給料システム・生活スタイル・羽生フィーバーへの対応の遅れ・連盟が抱える問題点など現在の「将棋界」の実情をざっくばらんに綴った本です。

名人になりたての頃の谷川棋王の将棋を見て「これくらいで名人か」と発言し(恐らく自分を鼓舞する意味もあったと思います)物議をかもした田中寅彦九段が著者、そしてどことなくスキャンダラスな本書のタイトル。

この二つを見たときにケインは「(ぴー)原と(ぴー)葉事件の詳細」や「理事選にまつわる水面下でのかけひき」とか結構ドロドロしたものが出てくるのではないかと思いましたが、普通のエッセイ集ですね。

本書に出てくる話は冒頭のエピソードにしても、雑誌「将棋世界」に連載中の「対局日誌(河口六段)」を長年読んでいる方にとってはお馴染みのものが多いと思います。

老棋士A「連盟もそろそろ銀行から融資を受けてもいいんじゃないか?」
棋士 B「融資を受けて何に使うんですか?」
老棋士A「どうするって、皆で山分けするんだわにぃ」

昔の棋士総会での話らしいんですが、個人的にはこれが一番笑いのツボにヒットしましたね。

将棋を指し始めて、盤面だけではなくより深く将棋を楽しみたいと考えている方や、将棋を知らない友人や家族の人に一読してもらいたい一冊です。