真剣師小池重明

団鬼六だからこそ書けた渾身の伝記小説です
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評価:A
対象者:将棋ファン全般
発売日:1997年4月

アマチュア将棋界において、もはや伝説となっている強さを誇った「真剣師」である小池重明氏の、波乱万丈の生涯を綴った伝記小説です。

真剣師とは、プロではないけど将棋で生活している人たち、いわゆる「賭け将棋師」のことです。

全国に名だたる真剣師たちを次々と打ち負かし、挙句にはプロ相手にも勝ってしまうその絶対的な強さ、そして賭け将棋独特の緊迫感は、とても引き込まれるものがあります。

有名な関西の真剣師加賀敬治氏との通天閣の死闘、「将棋世界」のアマ・プロ戦でのプロ撃破、2年連続のアマ名人位獲得など、普通のアマチュアとは一線を画した棋力の持ち主だったですが、女性との駆け落ちや寸借事件など、その破滅的な性格ゆえに将棋界においては決して表舞台で輝くことのできなかった小池氏。

この本を読むと「もしプロになれていれば・・・」という考えがどうしても湧いてきます。ただ、その強さは「アマで真剣の勝負」だったからこそ輝いたのかもしれませんが・・・。

著者の団鬼六氏は、晩年の小池氏を面倒みていたこともあり、実に詳しく、また深い視点から本書を書いています。将棋の強さだけでなく「小池重明」という人間が、余すとこなく著わされています。

最近は、アマチュアがプロに勝つこともちょくちょくありますが、当時はそんなことは誰も考えていなかった時代。だからこそ、その強さがより際立ったものに感じられます。ぜひ将棋ファンには、読んでいただきたい一冊ですね。(投稿:Shigekun二段)