羽生の頭脳 Vol.9 激戦!横歩取り

入門書はこのシリーズの2冊がオススメ
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評価:B
対象者:5級〜二段
発売日:1994年9月

発売から15年以上が経った現在でも人気が衰えることの無い「羽生の頭脳」シリーズ。第9巻のテーマは次の10巻とともに「横歩取り」となっています。

激しい変化が多く、定跡の知識の有無が勝敗を大きく分けるこの戦法。著者の羽生さんは本書のはしがきで『初めて覚えた定跡を使って、相手に勝ったときの興奮と嬉しさ』を思い出させてくれるとして、現在でも横歩取りを『一番好きな戦法』として挙げておられます。

全222ページの3章構成で、最終章は自身の公式戦から6局をピックアップした自戦記形式となっています。目次は以下の通りです。

第1章 横歩取り△2三歩型(1.決断の▲3二飛成 2.見直された▲3六飛)
第2章 相横歩取り戦法(1.急戦定跡 2.持久戦定跡)
第3章 激戦!横歩取り・実戦編(対谷川×2・屋敷・阿部・先崎・田丸の計6局)

この局面は決断の分かれ道です

第1章 横歩取り△2三歩型より:図は△3五角まで
先手の指し手の一つ分岐点となるこの局面。本書では▲3二飛成と▲3六飛の双方を解説しています。

▲3二飛成なら以下△同銀▲3八銀△3三銀に▲6八玉や▲4五角、▲1六歩(次に▲3五金△1四角▲1五歩で角を捕獲する狙い)などが有力な選択肢です。

もっとも変化の多い定跡

第2章 相横歩取り戦法より:図は△7六飛まで
先手の有力な選択肢は▲7七桂か▲7七銀となります。後者の場合は以下△7四飛▲同飛△同歩の飛車角総交換となり、激しく、かつ変化の多い局面に突入します。

横歩取りの入門書として考えた場合には、2002年に出版された「郷田真隆の指して楽しい横歩取り」の方が、@近年登場した△8五飛をカバーしている、A対象棋力が本書よりもやや低めになっている、という点でオススメできるのですが、残念ながら絶版になっています。

中級レベルにまでもう少しという方には敷居が高いかもしれませんが、本シリーズ以外に最適な棋書はありませんので、頑張ってみてください。続編となる「羽生の頭脳 Vol.10 最新の横歩取り戦法」では、本書では登場しなかった横歩取りの「△4五角戦法」「△3三桂戦法」「△3三角戦法」がテーマとなっています。

なお、本書は15年以上前に出版されているということもあり、それ以降に登場した数々の新手は触れられていません。なかでも第2章の相横歩取りの部分は、北浜七段が実戦で披露し、本書の結論を覆すことになった「北浜新手」と呼ばれる重要な手があります。詳しく知りたい方は「横歩取り道場 Vol.2」や「新手年鑑(入手困難)」で補ってあげる必要があります。